リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。
「じゃあ、自殺を選ぶのはいけないことだって言うの?」
「必ずしもそうとは言えねえ。でも、考えてもみろ。アパートの一室で自殺した後、その部屋を貸す大家はいくら家賃を下げなきゃいけねえと思う? 電車に飛び込んで死んで、一体どれだけの人が迷惑を被る? 遺族は葬儀代にいくら払うと思う? 自殺者が出た親族は、その後どういう生活を送ると思う?」
「それは……。」
「私は思う。どんなにつれえことがあっても、必死に生きてる奴の方がよっぽど真面目だとな。」
一理あるかもしれない。そして、それは考えようによっては歪んでいるけど、「自殺はやってはいけない。」という点においては、正しい考えだと思った。
でも、それを手伝っている人間の言うことではない。だから、断定止まりになってしまう。矛盾が生じ。そこに疑問を感じるのだ。
「だったら、紗栄子はどうしてこの仕事をやってるわけ?」
「……私も奴らと同じなんだよ。でも、必死に生きることを選んだ。生きるためさ。」