リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。
陽がすっかり昇って、辺りの様子が肉眼ではっきり確認できるようになった。
ちょうどその頃、金子が欠伸交じりに起きてきて、それとすれ違うように、紗栄子が部屋に戻っていった。
「ねえ、紗栄子っていつからこの仕事してるわけ?」
「もう2年になるかな。」
金子が目薬を入れながら答えた。
「その前は何してたの?」
「他人の詮索はしない方がいい。」
「それはわかってるけど……。」
「まあ、でもヒントくらいはいいかな。」
金子が傍にあった冷蔵庫から牛乳を取り出し、それを飲んだ。
「3年ほど前、当時高校生だったある女の子が同居していた看護婦を殺し、捕まった。しかし、その1年後、その女の子は、刑務官を3人殺し、脱走。今現在も指名手配中。」
訊いたことがある事件だ。一部噂では、海外に逃げて、テロリストになったとか。
その犯人の名前は……。
「三田紗栄子……。」