リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。
「暇だな……。」
紗栄子が呟く。
「暇だね……。」
私も呟く。
電車の中では、永遠に感じた時間の流れも、ここでは永遠の永遠のもっと先のように感じる。
でも、嫌じゃない。確かに、まずいビールも、暑さも、吐き気もあるけど、電車の中より、教室の中より、ずっと自由だ。
自由だ。そう思うと、心まで自由だって気がして、ビールが美味しく感じる。暑さも和らぐ。吐き気も失せてくる。
「ポーカーでもしない?」
「何を賭ける?」
紗栄子が部屋の奥からトランプを持ってきた。
「うーん。賭けるものかあ……。」
私には賭けるものがない。お金も、酒も、タバコも、何もない。