リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。





「暇だな……。」



紗栄子が呟く。



「暇だね……。」



私も呟く。



電車の中では、永遠に感じた時間の流れも、ここでは永遠の永遠のもっと先のように感じる。



でも、嫌じゃない。確かに、まずいビールも、暑さも、吐き気もあるけど、電車の中より、教室の中より、ずっと自由だ。



自由だ。そう思うと、心まで自由だって気がして、ビールが美味しく感じる。暑さも和らぐ。吐き気も失せてくる。



「ポーカーでもしない?」



「何を賭ける?」



紗栄子が部屋の奥からトランプを持ってきた。



「うーん。賭けるものかあ……。」



私には賭けるものがない。お金も、酒も、タバコも、何もない。




< 88 / 109 >

この作品をシェア

pagetop