リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。
「指は?」
咄嗟に出た答えがそれだった。
「指か。」紗栄子が不気味な笑みを浮かべた。
「やめとけ。やめとけ。」
「どうして?」
紗栄子が両手を広げた。
「イーブンにするなら、お前も小指、切らねえとな。」
紗栄子の右手を見ると、小指がなかった。何かで切られたような痕がある。
「どうしたの? それ。」
「何。大したことじゃねえ。ちょいとマイク・タイソンにハメられたのさ。」