リンカーンはアメリカンコーヒーを三杯飲む。
「オーライ。上出来だ。」
紗栄子のその言葉に、私は思わず顔を上げた。
「それでいい。ああ、いい。吹っ切れた。」紗栄子が立ち上がって、私の投げたバタフライナイフを拾った。
「似てると思ってたけど、お前は私とは違う。昔の私なら何の迷いもなく切ってた。それでいい。」
紗栄子は今までにないくらい、安心したような、純粋な女子の笑顔をしていた。
その笑顔の理由はきっと、昔の自分と私をこれ以上重ねなくていい、解放感からだろうと思う。
その紗栄子の笑顔を見て、私は落胆した。
なんだ、こいつもただの女じゃないか。