「お前に死に方を選ばせてやる」
……



「ワトソン、ビーン! お前たち二人は左から機関銃で奇襲をかけろ! ミラーは何名か連れて大きく迂回し、敵後方に入り込め! 他のものは俺とともにここで両チームを援護する! ワトソンとビーンが敵の銃火をひきつけたら、手榴弾投擲距離まで近づき、一気に敵塹壕内を殲滅する! 質問は!? ないな。よし、かかれ!」
 密林で敵の塹壕にぶち当たってしまった我々は、圧倒的不利な地形での戦いを強いられた。
 くそ、斥候を出さずに強行軍を命じた馬鹿中隊長のせいだ。最後尾だった我々の小隊以外はほぼ壊滅。当初は敵のほうが圧倒的に人数も少なかったが、今では五分といったところだ。
「現在の指揮権は誰にあるか確認できたか!?」
 俺は隣にいる通信兵に尋ねた。 
「中隊長とは連絡がつきません! 指揮権は少尉、あなたです!」
「……よし。このまま作戦を行う」
 二人が機関銃で奇襲を始めれば、必然的にライフル数丁しかないこちらよりも向こうに銃口が向くはずだ。二人がやられる前に塹壕を潰すか、ミラーたちが後ろから奇襲をかけられれば、俺たちは生き残れる。
 新兵のスナイパーが俺の隣で震えている。初の実戦だが、彼はよくやっていた。生き残れれば、いい兵士になるはずだ。
 ……二人が位置につき、機関銃をぶっ放し始める。思ったとおり、敵の銃口はそっちに集中した。
「手榴弾用意! ……今だ! 行け、行けー! 真っ直ぐ走るな! ジグザグに動け! 止まるな! 行けー!」
 先頭で飛び出した俺は手榴弾を塹壕に投げ込む。同時に敵兵の悲鳴。俺は死体の上に飛び乗り、こちらに向けて銃を構えようとする敵に銃弾を見舞った。
 ワンテンポ遅れてぞくぞくと味方が到着し、そして反対側からミラーたちと思われる分隊も攻撃を開始した。
 あっという間に殲滅。思ったよりも敵が少なかったのか? いや、作戦が上手くいっただけだ。
「やりましたね、少尉!」
 新人スナイパーが笑顔で駆け寄ってくる。そのとき、俺は彼の後方の敵がピクリと動くのを見た。
「伏せろ!」
 しかし敵のほうが速い。銃を構えている暇はないと思った俺はスナイパーを引き倒した。
 だが、代わりに銃弾は俺の胸に当たる。
「しょ、少尉!」
< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop