桃色吐息
「百花、なにしてんだよ、お前が来るとこじゃないだろ。」

彼女はビトにそう言われたけど、ずっと黙っている。

「なんか事情があるんだろ?こいつは意味もなくそんなことしねぇよ。」

アキラ君がそうフォローすると、隣でカオリさんがキラキラした目で「カッコいぃ♪」なんて呟いてる。


「そうよ、この子が桃ちゃんを助けてくれたんだからね。あんたがファンの子をちゃんとフォローしないからこういうことになるんでしょうよ。」

べべさんにそういわれて、ビトはまた何かあったのって、私の手を握った。

「大丈夫だよ、私が悪いんだもん。ちょっと悪口言われただけ。」

ビトのこういう悲しそうな顔は嫌だなって思う、だから笑っていなきゃって…


「エイジはどうしたんだよ、一緒だったんだろ?」

「蓮と一緒にライヴ見に行ったよ、私がついてくと邪魔しちゃうし。」


もう誰かに守ってもらうとか、逃げ回ってるのとかは嫌だな…

堂々としていたいなって思うんだけど、なんだかうまくいかないや。

「なれてるから大丈夫だよ、ああいうのは…」


そうするとなぜかカオリさんが立ち上がってこう言った。

「そんなことに慣れちゃダメだよ!」

なんかみんなビックリしてる。

「あーでも、私もどうすればいいかわかんないけどさぁ… 彼奴等タチが悪いからね。私もよく色々言われたもん。アキラ担は皆仲良いのにな…」

そんな話はじめて聞くので、ビックリする。
前は優しくしてくれてたと思っていたのにな。

「あんた気付いてなかったの?ミキがしてきたこと。
うまくあんたに取り入って、ビトの情報だけ聞き出して、裏サイトでヤラカシてる奴らに広めてたんだよ。」

百花ちゃんは色々詳しいみたいで、それから今までのことを教えてくれた。

「あんたが外に出れなくなるように、裏で意図引いてたの全部アイツだからね。あんたの髪を切ったストーカー女も、あのサイト見てギャルソンのステージに潜り込んだんだから。」

全く人が良すぎるよなんて、そんな風に言われてちょっと反省する。


「ダメだなぁ私は。もっと強くなりたいなぁ…」



「まあ私も、その裏サイト利用してたから、あんまり人のこと言えないけどさ…」


じっと聞いていたカオリさんも、ため息をついている。

「何でだろうね?ビトのファンは特に猟奇的な子が多いよね… 私もコンサート見に行くと、酷いことよく言われたもん、あの子達に。」





「この子がファンのこと大事にしないからに決まってるでしょ。
いつも自分のことばっかりで、桃ちゃんのこともなんも考えてあげないし。
ドンだけ回りに甘えてるのよ。」


べべさんが言うとなんだか凄みがあるなぁ…




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