桃色吐息
「おはよう。」

リビングのソファーで座ってまっていると、エイジ君がすぐ隣に座る。
改めてそう伝えると、エイジ君も真っ赤になっておはようって小さくつぶやいた。

「あ、顔洗ってきていいかな?」

私は洗面を済ますと、エイジ君がキッチンでお湯を沸かしていたので、何か手伝うって声をかけた。

「お茶入れるから、じゃああっちの湯飲みとって。」


茶箪笥から急須と湯飲みとお茶っ葉を用意すると、湯冷ましがないなって気づく。

エイジ君にそれを伝えると、なにそれって言われて、ああないんだなって思った。
そっか、普通ないのかなそういうの。

「お前んち、なんか色々ちゃんとしてるもんな。」

エイジ君が手馴れたようにお茶を入れてくれる、いつもやってるんだな。




2人でソファに戻ってテレビを見ながら、まったりとお茶を飲んだ。


「今日は何か予定ある?」

そういえば今日は何も約束してなかったなって思い出して、いつもならおじいちゃんのところにお花のお稽古に行くところだけど、どうしようかと一瞬悩んだ。

だって、今日もずっと一緒にいたいもの・・・


「土曜日はじいさんとこ行くんジャなかったっけ?」


エイジ君はちゃんと覚えていてくれて、なんか嬉しくてそうだよって返事をした。

「午後から行けばいいから、まだ時間はあるよ。」




もうすぐ夏休みが終わる・・・

こうやってずっとエイジ君と毎日のように会うことは出来なくなるんだなと思うと、ちょっと寂しくて、
今年の夏は色々あったなって改めて思い出していた。


「こんなにあっという間に終わった夏休みって、はじめてかもな。」

いつも何もする事がなくて、ひたすら勉強したり本を読んだりゲームをしたり、自宅で時間をつぶすのが苦痛だったから。

「何だか長いようで短いよな。」


エイジ君も、私と同じ気持ちなのかなって思ったら、またいつものように頭を撫でてくれて、何だか酷く安心していた。



「夏休みが終わったら、もうすぐ誕生日だな。一日予定空けといてくれない?」


その日は日曜日だったから、まだ何も予定もなくて大丈夫だよって答える。

やっと、やっとだなあ・・・


私もやっと16歳、エイジ君と同じになるんだ。



< 121 / 128 >

この作品をシェア

pagetop