桃色吐息
いつものように手を繋ぎながら、山手線と総武線を乗り継いで高円寺まで向かう。
あの時と同じだ、何だかエイジ君はとても嬉しそうで、私もそんな彼の横顔を見ているだけで嬉しくなる。

ゴツゴツとした大きな手のひらに太くて長い指が、私の小さな手にしっかりと絡んで、これからもずっと一緒なんだといってくれているように思う。

余計なことを話さなくても、大好きだって気持ちが伝わってくれているような気がする。


「母さんがさ、桃の誕生日だって言ったら、ケーキ買っといてくれたんだよな。」

「ええ、ほんとに?楽しみだなあ~♪」


今日はパンケーキ食べるからって、バースデーケーキはいらないなって思ってたんだけど、やっぱりそういうのあると嬉しい。

蓮もカオリさんと一緒にケーキでも食べてるかな?


「初めてだなあ・・・蓮と一緒じゃない誕生日って。」

繋いだ手をぶんぶんと振りながら、エイジ君の顔を見上げて微笑みかける。

「ホント、お前ら仲いいよな。」

そういって笑い返してくれるから、いつものドキドキが止まらなくなるようだった。




エイジ君のうちのマンションにつくと、今日はミチルさんは居ないようで、またさらに鼓動が早くなる。

初めてきた時のことを思い出す。

だけどエイジ君は、この前ミチルさんが居たときと同じ様に、普通にただいまと呟いて靴を脱ぐと、私をリビングの方に招き入れてくれた。

「そこ座ってちょっと待ってて。」

私は言われるがままに、緊張がマックスになりながらソファーの真ん中に座って待っていると、エイジ君は冷蔵庫の中から小ぶりなかわいらしいケーキを持ってきてくれて、ろうそくを立てて、そこに火を点した。


「うわぁ、ヴィタメールのマンゴーケーキだ!?」

これ大好きなんだよねって言うと、だと思ったって言われるから、何でわかるんだろうって不思議に思った。


「実は蓮にきいといたんだ。」

ああそっか、エイジ君と蓮は同じ高校だって、いまさら思い出す。
二学期に入ってからも、相変わらず仲良くやってるんだな。ちょっと羨ましい。


コンポのリモコンの再生ボタンを押すと、モンパチのバースデイソングが流れて、ちょっとテンションが上がる。

”誕生日が大好きだ あなたが祝ってくれるから・・・”
そんな歌詞に何だか目頭が熱くなっていって、曲が終わった後もう一度おめでとうといってくれるから、ろうそくの火を一気に吹き消した。


< 124 / 128 >

この作品をシェア

pagetop