桃色吐息
今まで出会ってきた男の子たちは、みんな私を特別な感じで見る人ばかりだった。
私がいつも、無意識に笑顔で愛想良くしてしまうクセがあったから、変に意識されてしまうみたい。

自慢じゃないけど、きっと私はモテる方なんだと思う。
大概の男子は、私が話しかけても、もじもじとしてまともに会話なんかしてくれない。

普通に話せるのは、かなり年上の人か、蓮かビトぐらい。


でもこの人は、なんだか違うなって、一瞬でわかった。


「お前さ、友達が来てるんだから、挨拶ぐらいしろよ。」

ハッと気が付いて、いつものように愛想よくいらっしゃいなんていって、逃げるようにしてキッチンに戻った。

蓮の友達は、エイジ君と呼ばれていて、お母さんともなぜか顔見知りだった。
そういえば、前にライブに一緒に行ったって人なのかな?



「そういえばさ、なんで急にチーズケーキなんか作ってんの?」

蓮がいきなりそう聞いてくる。

「なんか、ビトが急にNYにいた頃みたいな、チーズケーキが食べたいっていうから・・・」

私は自分の分のカフェオレを入れて、蓮の隣に座る。もうすぐビトがくるし、なんだかそわそわしてしまっていた。


「そんなにうまいの?」

蓮の食べかけのケーキをその男の子は一口食べて、私の顔を見ながら「うまいじゃんって。」ってまた自然に笑ってくれた。




そのしぐさや顔や声に、なぜか今まで感じたことのない感情が芽生えていた。



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