桃色吐息
「やっぱりそうなんだ・・・」

ああ、さっきの話、蓮は聞いていたのかなってちょっと思う。


「だって、初めてだったんだもの、あんなふうに自然に接してくれる人。」

そうだ、一目惚れに似た感情だったのかな?
さっきビトに言われて気が付いた、出会った瞬間に好きにっていたのかもしれないって。


「色々相談にのってもらってたんだ、ビトのこと。
ずっと辛かったの、心配してくれて一緒に居てくれてね、近所まで送ってくれてね、
もう、ダメだって思った。この人が好きだって思った。」


だけど、それは片思いだもの・・・それは蓮がよく知っていること。


「でもきっとその人には、好きな人がいるよ、そうでしょう?」



蓮は神妙な顔をして私に問いかけた。


「エイジのことが好きなの?」


そういわれてうなずくと、蓮はとても悲しそうな顔をした。やっぱり知ってるんだよね。


「そっか」


しばらく沈黙が続いてから、私は蓮にそれとなく尋ねた。


「蓮は知ってるよね、エイジ君の好きな人。」


素直な蓮は、そのままうんと答えて、しまったというようなやばそうな顔をした。


「ああでも僕は、リンダさんのことはよく知らないし、ちょっとライブで見かけただけだし・・・」


ああ、リンダって人なんだ、きっと年上なんだろうなって一瞬でわかってしまった。

ホントこの人は、口が軽いっていうかなんていうか・・・まあいいや。


蓮はそう言うと、昔のようにハグをしてくれて、きっと大丈夫だよっていってくれる。

でもなんか…



「蓮、臭いよ…」


最近部活帰りとか特に臭くて、ちょっと嫌。

それがなんだか可笑しくて、少し笑いあった。


兄妹って、うまくできているんだなって、そんな風に感じた。



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