桃色吐息
そんなことがあってから、私は余計エイジ君を意識してしまっていた。

迎えに来てくれても、この前よりちょっと距離を置いて歩く。


「どうした、またなんかあったのか?」

いつもの目黒駅まで向かう道中にそう聞かれて、彼の顔を見るだけでも緊張してしまう。

何かはなさなきゃって思っても、何を言い出していいのかわからなかった。



「エイジ君は、普段うちでは何してるの?」

当たり障りのないことを思いついて少しづつ話すと、彼もちょっとづつ返してくれる。


「そうだな・・・音楽聴いてるか、洋服をカスタマイズしてるかな?」

ああそういえば、洋服好きそうだもんなって思い出す。やけにファッションのことに詳しいし、バイトしてる店も有名ストリートブランドの店だって言ってた。私はよくわからないけど。

「私はお母さんが買ってきたの、適当に着てるだけだもんなあ・・・
あと、週末は着物だし。」

なんとなく、毎週末にはおじいちゃんのところに度々行って、そこにいるときは着物で過ごすことが多かった。お母さんがそうだったから真似してただけだけど。

「へえ、着物着れるんだ、すげーじゃん。」


変なところ感心されてちょっと照れたりして。

「いつも着てるから普通だよ。お花やってるときは、そのほうがなんか落ち着くし、他のお稽古に来てる人もみんなそうだしね。」


まあそんな生け花教室って、最近はあまりないんだろうな。もっとラフなところが多いはず。




今週末もお稽古かなあなんて思いながらも、日曜日はたまにはどこかに行きたいなって漠然と思っていたりした。


あ、そういえば思い出した、淑子ちゃんと昨日チラッと読んでいたファッション雑誌に、明日からラフォーレのバーゲンだって書いてあったのを・・・
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