桃色吐息
私達は手をつないだまま、というか私の手をずっと引っ張ったまま、この前いっしょに走った表参道の坂道を足早に歩いていた。

私のことなんかお構いなし、ずんずん先に行くエイジ君の背中が、なんだかとてもイライラしていて、ああやっぱり私じゃダメなんだって思う。

そう考えれば考えるほど涙が潤んできて必死に我慢する。

こんなところで泣いてたら、変な目で見られちゃう。
それよりも、彼に嫌われちゃうって思ったとたん、また切なくなる。




わかってたのにね、私はただの友達だよ。



あれ?
この気持ちってデジャブかな?ずっと昔に同じことを考えていたなって、ぼんやりと思い出した。





駅前の信号が赤になる。


私達は立ち止まってやっと隣に並んだ。






「ねえ、エイジ君あの人でしょ?」

やっとの思いで私はそういった。


「エイジ君の好きな人ってあの人でしょ?ちゃんと教えてよ。」


ああ、涙がこぼれそうだよ、どうか違うと言ってよって、かすかな望みがあったのに







「そうだったらなんなんだよ」




エイジ君は今迄で一番冷たい声でそう言っただけだった。




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