桃色吐息
目黒線に乗っているころ、時間がぎりぎりになりそうで、私は携帯の時計をずっと気にしていた。



「やばい、もうすぐ八時になっちゃうよ・・・」



エイジ君は、相変わらずずっと私の手をつないでいてくれる。


「俺が一緒に行って謝ってやろうか?」

とっさにそんな風に言われたので、さらにお父さんの怒った顔がまた目に浮かんで思わずそれは絶対ダメって答えていた。



「この前お父さんにこっぴどくしかられたばかりなんだもん、彼氏なんか連れてったら、とんでもない事になるよ。」


とっさにそんな風に言ってしまったんだけど、もういいよね?

エイジ君は私の彼氏ってことでいいんだよね?


彼は何も否定せずに、嬉しそうに笑い返してくれたので、ああいいんだなって思った。





いつもの駅の改札で、エイジ君にバイバイして足早に帰る。



なんだか今日のめまぐるしい一日がやけに嬉しくて、私は思わずスキップしていた。


もう一度改札の方を振り向くと、エイジ君はまだずっと私のほうを見ていてくれて、小さく手を上げてくれていた。




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