桃色吐息
ブルーハーツを聴きながら、ずっと思い出していた。
きっと私は、このアルバムを聞くたびに思い出すんだ、今日の事を。

「パスタ、美味しかったなぁ…」

ぼんやりと呟くと、僕もって蓮も呟いた。


「なんだろうなぁ、桃が作るみたいなちゃんとしたやつじゃなくてさ、レトルトのルーでチョー簡単なやつだったけど、すごく美味しかったよ。」


蓮も同じなんだな、きっとなにを食べるかではなく、誰と食べるかが重要なんだ。



あまりにも突然に昨日は砕けていく、それならば今そこで僕らなにかをはじめよう。


まだ不安はたくさんあるけれども、これから始めるんだなってぼんやりと歌詞カードを読みながら思う。



私はその、白とブルーのロゴのアルバムを借りて、自分の部屋に飾っておいた。






蓮はもう寝ると行ってしまったので、私は一人でぼんやりと携帯を見ていた。

さっきまで一緒だったのに、もう会いたくて、声が聞きたくてたまらなくなる…


ずっとメールの受信履歴を眺めては、エイジ君の言葉を読み返していた。


いきなり携帯が鳴り、ディスプレイにエイジ君の名前が出てビックリしてすぐに出ると、優しそうな声でもしもしと聞こえた。



「今うちに帰ってきたよ…」


「うん、今日はありがとう、送ってくれて。」


「明日も、同じくらいの時間に迎えにいくな。」


耳に届く彼の声が心地よくて、またすぐに会いたくなって泣きそうになる。


「疲れただろ?大丈夫か?」


彼が笑っているのがわかる、そう言われて又さっきまでの事が思い出されて、お腹の真ん中がキューンと疼くのがわかった。


「うん、大丈夫、全然平気。」


淑子ちゃんが言ってたような、痛みとかは全然なかったなって驚く。
エイジ君が上手だったんだろうなって思うと、ちょっとだけ複雑な気分だけれど、やっぱり嬉しい。


「やべぇ、なんかもう会いたいよ。」


「私も。ずっとそばに居れればいいのに…」


なんとなく電話が切れなくて、いつのまにかうとうとしてしまって…


「じゃあ、もう寝ろよ、おやすみ。」


エイジ君が優しくそういってくれてやっと電話を切った。
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