桃色吐息
それからも、バイトのない日には、エイジ君が学校まで迎えに来てくれた。

いつもより2人の距離がちょっと近くなったけれども、前より話すことが減った気がする。
なんだかいつも2人で緊張している感じ。

前はこうやって話してくれない男の人が嫌で、何でちゃんと話してくれないんだろうと思っていたけれども、相手が好きな人だと気にならないんだなあって思う。

何も話さなくても、そばに居るだけで嬉しいんだなって実感する。


学校から最寄り駅の改札まで、何時もそこまでの短い間だけ。
うちまで来てくれることは、それからはなくなっていた。


大人たちに冷やかされるのが嫌だったし、なんだかそれ以上を期待してしまいそうだったから。





寝る前の時間になると、必ずメールをした。

ほんの一言二言の簡単なメールで、返事もたいていすぐしてくれることが多かった。

本当は声も聞きたいし、顔も見たいし、ずっと一緒にいたいし、ビデオ通話でもすればいいんだろうけれど、なんだろうそれは少し恥ずかしくて出来ずにいた。




そんな感じで一週間がたって、なんだかんだ次のデートの約束もできずに、なんとなく日曜日はどうしようかななんてぼんやりと考えながら、週末もメールをする。



”日曜日も会いたいなあ、またどこかに行かない?”


土曜日のお花のお稽古のあと、その日はまっすぐ家にかえって、珍しく家族四人でご飯を食べた後そんなメールを打った。




だけど、すぐに既読にはなったものの、返事は一向に来なかった。



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