桃色吐息
ビトは半分外人みたいな人だったから、いつも普通に挨拶程度に小さい頃からキスしてた気がする。

そういえば、エイジ君とはあの時しかしてないな。


やっぱり日本の男の子は、そういうところシャイなのかしら?




室内から外に出ると、ペンギンの水槽があって、そこでも子供達が走り回ってペンギンを追いかけていた。
半地下の階段を下りると、水の中を泳ぐペンギンも見られる。
水中を飛ぶように泳ぐ様が、なんだか気持ちよくてずっと目で追ってしまうと、なにかエイジ君が鼻歌を歌っていた。

「鳥になって泳ごうか魚になって飛ぼうか・・・」

ああペンギンの歌なのかなって、ぼんやりと聴いていた。



順路を順番に歩いていくと、外には小川や池がある広いスペースがあって、そこは館内よりもずっと人が少なかった。

池の内側から展示を見られるスペースもあって、そこも薄暗くて人気がなくてやっと二人きりになれる。


ちょっぴり期待して、エイジ君の手を強く握ると、「どうした?」って聞いてくる。


だけど、どうしてもそれは言えなくて「なんでもない」ってうつむいてしまう。




なんだかちょっと切なくなってきたなあ・・・
こんなに近くに居るのに、もっと近くに居たいんだもの。




そんな風に思っていると、後ろの方から子供ずれの家族ががやがやとやってきて、一瞬でにぎやかになったので、私たちは足早にその場所を移動していた。



水族館の出口の近くにあるショップで、お土産に何か買おうと見ていると、イワトビペンギンのぬいぐるみがあった。
逆立ったトサカがなんか可愛くてずっと抱きしめて見てしまう。

「なんかこいつ、パンクっぽいな。」

そういって笑いながら、そのぬいぐるみを買ってくれた。

「こいつ俺の代わり。」

そういって私に渡してくれるのがたまらなく嬉しくて、ずっと大事にしようと誓った。




「あ、あれ乗りたいなぁ・・・」

目の前に大きな観覧車が見えて、思わず指差すと、じゃあ乗るかって言ってそこまで二人で歩いていった。




ここなら大丈夫かあなぁ・・・ 

やっと2人きりになれるって思ったら、なんだかドキドキして緊張してきてしまっていた。





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