桃色吐息
15
終業式が終わってしまうと、エイジ君は迎えに来る必要はなくなってしまうから、これからどうやって会おうかってなんだか悩んでいた。
明日から夏休みだ・・・
今日も2人で目黒線に乗っている。
後ちょっとで駅に着いちゃうなって寂しく思うから
「久しぶりに、うちに来ない?」
今日は早めに学校も終わったし、そう誘ってみた。
「昼間ならあのおっさんたちもこねーだろうしな。」
そう、カズおじさんたちが居ると、絶対色々言われるから連れて行きたくなかったんだ。
改札を出て、手を繋いでうちの店まで歩くのはそういえば初めてで、そういえばちゃんとお母さんとかにも言ってなかったなって思って少し緊張してきた。
「ただいま~」
いつものようにお店の方から家に入ると、お母さんと小百合さんが、いつものようにお帰りなさいって言ってくれる。
「あら、エイジ君久しぶりね。いつもありがとね、桃を送ってくれてたんでしょ?」
ああ、やっぱり普通にばれていたな・・・
「あ桃、今日はかずなりくん居るから、ちゃんと話しなさいね。」
え・・・
お父さんが珍しく帰ってきている・・・
絶対なんか言われるなあ・・・文句言われるなあ・・・ビトの時だってずっと色々言われてきたもの。
「なあ、誰のこと?」
店の中で戸惑ってる私を見て、エイジ君が何のことだかわからずに聞いてくる。
「お父さん。」
それだけいうと、エイジ君も微妙な顔をした。
とりあえず、居間の戸をそっと開けて、小さい声でただいまというと、お父さんはテレビに向かって猫背のままずっとゲームをしていた。
「ああ、おかえり。」
こっちの方に振り向きもせず夢中になってるみたいだから、こっそり入って二階に行こうかと思ったけど、
「こんにちわ。」
普通にエイジ君が挨拶してくれちゃうから、お父さんはびっくりしてこっちを振り向いてしまった。
「え、えっとね、彼氏のエイジ君です。」
そうやって緊張しながら紹介すると、
「どうも、はじめまして。」なんてちゃんと頭を下げてくれた。
お父さんは少し固まったまましばらくエイジ君のことを見ていたけど、何も言わずに向き直ってそのままゲームを続ける。
なんていうか・・・見なかったことにしようとしてるよね・・・
「あー、私着替えてこなきゃなあ~」
そういって、エイジ君を引っ張りながら一緒に部屋に行こうかと思ったんだけど、
「桃コラなにやってんだ。お前は行くんじゃないよ、そこに座わってろよ。」
エイジ君をそこに座らせて、お父さんはこっちに向き直ってゲームをリセットした。
ゴメン、って思いながら、私はエイジ君を残して自室に逃げてしまった。
「やっベー本物だ・・・」
エイジ君がそんな風に笑っているから、なんかお父さん機嫌悪くしやしないかとハラハラしてしまう。
とにかく急いで着替えて戻ろう。
下に降りていくと、エイジ君とお父さんは、何も話さずににらめっこしてるようだった。
「あー、コーヒーでも淹れようかなぁ、お父さんも飲むよね?」
「ああ」
なんかめっちゃ気まずくなってる、どうしよう・・・
「俺結構見てますよ、ドラマとか。」
エイジ君が痺れを切らしたのか、そんな風に話しかけてるけど、お父さんはずっと黙ってる。
「いつから付き合ってんだ。」
お父さんはやっとそれだけ言った。
「もう一ヶ月ぐらいですかね?」
「一ヶ月前なら、ビトと付き合ってただろ。」
「桃とビトが別れてすぐぐらいっすかね・・・」
「お前が別れさせたのかよ。」
「そんなんじゃないっすよ。」
「ビトは何も言ってなかったぞ。この前会ったけど。」
「そういうことはいわないっしょ普通。」
「まだ何もしてないよな・・・」
「何もってなんっすか?」
お父さんは言いくるめられて黙ってしまったところで、私は2人にブラックのコーヒーを渡した。
「ありがとう」
二人が同時に言うので、なんかおかしくなる。
「桃、いくらなんでも早くないか・・・」
お父さんはうなだれてそう私に聞いてくる。
「エイジ君よく家に遊びにきてたんだよね、蓮の友達だから。聞いてないのお母さんからとか。」
お母さんはそういうの敏感なのに、お父さんは聞きたくないことは知らんぷりするんだよなあ。
「ちゃんとまじめに付き合ってますから、大丈夫っすよ。」
エイジ君は平気な顔をして、普通にコーヒーを飲んでいる。
何で余裕なんだろうなあ・・・
「嘘だ、絶対お前手がはやそう。」
あ、ばれてるって一瞬思ったけど、エイジ君と顔を見合わせてなんだか笑ってしまった。
「何でそう思うんですか?自分がそうだったからっすか?」
ハッキリそう言い返されて、お父さんはまた黙ってしまった。
「なんかこの前Babyに会ったとき、言われたんですよね、似てるって。」
エイジ君はずっと楽しそうにニヤニヤしながら、お父さんに突っ込みを入れまくっている。
いつもはお父さんがそういう立場なのにな。
「どの辺が似てるのか、気になってたんっすけどね。」
「似てねーよ、俺はもっと普通だった。」
若い頃のお父さんなんか、よくわかんないから何とでも言えるよなあなんて思ったんだけど。
「あ、あれ見たことありますよ、童貞のドラマ。」
あれ面白かったですよねーってニコニコ言うので、私も知らなかったから気になった。
「それってすっごく昔のドラマ?」
「そうそう、高校生四人組がその学校で唯一の童貞って設定で、そのなかの一番さえない男の役だったヤツ。」
何でそんなの知ってるんだろう・・・私たちだって見たことないや。
「よりによってなんであれなんだよ・・・」
お父さんは、恥ずかしいから私たちに見せなかったのかなあ?
「正平が、パンクスになるシーンあったじゃないっすか。あれがぜんぜんパンクじゃなくて面白かったな。
あ、俺あの台詞に出てくるアンティノックとかよく行くんっすよ。」
「ねえ、何でそんな詳しいの?」
そうきくと、実はミチルさんがファンなんだって、初めて教えてくれた。
全然そんなこと言ってなかったのになあ。
「最近はそうでもないかもしれないけど、俺が小学生の頃とか、凄く見てたぜドラマとか。DVDあるから何度も見てたし、っていうか見せられてたし。」
それは、高校生の青春モノのドラマなんだけど、かなりおバカでそこがなんだかリアルで面白かったってなんだか真剣に語ってくれた。
「母さんにさ、正ちゃんみたいになれって言われたんだよな、子供のとき。」
「それってどういう意味?」
明日から夏休みだ・・・
今日も2人で目黒線に乗っている。
後ちょっとで駅に着いちゃうなって寂しく思うから
「久しぶりに、うちに来ない?」
今日は早めに学校も終わったし、そう誘ってみた。
「昼間ならあのおっさんたちもこねーだろうしな。」
そう、カズおじさんたちが居ると、絶対色々言われるから連れて行きたくなかったんだ。
改札を出て、手を繋いでうちの店まで歩くのはそういえば初めてで、そういえばちゃんとお母さんとかにも言ってなかったなって思って少し緊張してきた。
「ただいま~」
いつものようにお店の方から家に入ると、お母さんと小百合さんが、いつものようにお帰りなさいって言ってくれる。
「あら、エイジ君久しぶりね。いつもありがとね、桃を送ってくれてたんでしょ?」
ああ、やっぱり普通にばれていたな・・・
「あ桃、今日はかずなりくん居るから、ちゃんと話しなさいね。」
え・・・
お父さんが珍しく帰ってきている・・・
絶対なんか言われるなあ・・・文句言われるなあ・・・ビトの時だってずっと色々言われてきたもの。
「なあ、誰のこと?」
店の中で戸惑ってる私を見て、エイジ君が何のことだかわからずに聞いてくる。
「お父さん。」
それだけいうと、エイジ君も微妙な顔をした。
とりあえず、居間の戸をそっと開けて、小さい声でただいまというと、お父さんはテレビに向かって猫背のままずっとゲームをしていた。
「ああ、おかえり。」
こっちの方に振り向きもせず夢中になってるみたいだから、こっそり入って二階に行こうかと思ったけど、
「こんにちわ。」
普通にエイジ君が挨拶してくれちゃうから、お父さんはびっくりしてこっちを振り向いてしまった。
「え、えっとね、彼氏のエイジ君です。」
そうやって緊張しながら紹介すると、
「どうも、はじめまして。」なんてちゃんと頭を下げてくれた。
お父さんは少し固まったまましばらくエイジ君のことを見ていたけど、何も言わずに向き直ってそのままゲームを続ける。
なんていうか・・・見なかったことにしようとしてるよね・・・
「あー、私着替えてこなきゃなあ~」
そういって、エイジ君を引っ張りながら一緒に部屋に行こうかと思ったんだけど、
「桃コラなにやってんだ。お前は行くんじゃないよ、そこに座わってろよ。」
エイジ君をそこに座らせて、お父さんはこっちに向き直ってゲームをリセットした。
ゴメン、って思いながら、私はエイジ君を残して自室に逃げてしまった。
「やっベー本物だ・・・」
エイジ君がそんな風に笑っているから、なんかお父さん機嫌悪くしやしないかとハラハラしてしまう。
とにかく急いで着替えて戻ろう。
下に降りていくと、エイジ君とお父さんは、何も話さずににらめっこしてるようだった。
「あー、コーヒーでも淹れようかなぁ、お父さんも飲むよね?」
「ああ」
なんかめっちゃ気まずくなってる、どうしよう・・・
「俺結構見てますよ、ドラマとか。」
エイジ君が痺れを切らしたのか、そんな風に話しかけてるけど、お父さんはずっと黙ってる。
「いつから付き合ってんだ。」
お父さんはやっとそれだけ言った。
「もう一ヶ月ぐらいですかね?」
「一ヶ月前なら、ビトと付き合ってただろ。」
「桃とビトが別れてすぐぐらいっすかね・・・」
「お前が別れさせたのかよ。」
「そんなんじゃないっすよ。」
「ビトは何も言ってなかったぞ。この前会ったけど。」
「そういうことはいわないっしょ普通。」
「まだ何もしてないよな・・・」
「何もってなんっすか?」
お父さんは言いくるめられて黙ってしまったところで、私は2人にブラックのコーヒーを渡した。
「ありがとう」
二人が同時に言うので、なんかおかしくなる。
「桃、いくらなんでも早くないか・・・」
お父さんはうなだれてそう私に聞いてくる。
「エイジ君よく家に遊びにきてたんだよね、蓮の友達だから。聞いてないのお母さんからとか。」
お母さんはそういうの敏感なのに、お父さんは聞きたくないことは知らんぷりするんだよなあ。
「ちゃんとまじめに付き合ってますから、大丈夫っすよ。」
エイジ君は平気な顔をして、普通にコーヒーを飲んでいる。
何で余裕なんだろうなあ・・・
「嘘だ、絶対お前手がはやそう。」
あ、ばれてるって一瞬思ったけど、エイジ君と顔を見合わせてなんだか笑ってしまった。
「何でそう思うんですか?自分がそうだったからっすか?」
ハッキリそう言い返されて、お父さんはまた黙ってしまった。
「なんかこの前Babyに会ったとき、言われたんですよね、似てるって。」
エイジ君はずっと楽しそうにニヤニヤしながら、お父さんに突っ込みを入れまくっている。
いつもはお父さんがそういう立場なのにな。
「どの辺が似てるのか、気になってたんっすけどね。」
「似てねーよ、俺はもっと普通だった。」
若い頃のお父さんなんか、よくわかんないから何とでも言えるよなあなんて思ったんだけど。
「あ、あれ見たことありますよ、童貞のドラマ。」
あれ面白かったですよねーってニコニコ言うので、私も知らなかったから気になった。
「それってすっごく昔のドラマ?」
「そうそう、高校生四人組がその学校で唯一の童貞って設定で、そのなかの一番さえない男の役だったヤツ。」
何でそんなの知ってるんだろう・・・私たちだって見たことないや。
「よりによってなんであれなんだよ・・・」
お父さんは、恥ずかしいから私たちに見せなかったのかなあ?
「正平が、パンクスになるシーンあったじゃないっすか。あれがぜんぜんパンクじゃなくて面白かったな。
あ、俺あの台詞に出てくるアンティノックとかよく行くんっすよ。」
「ねえ、何でそんな詳しいの?」
そうきくと、実はミチルさんがファンなんだって、初めて教えてくれた。
全然そんなこと言ってなかったのになあ。
「最近はそうでもないかもしれないけど、俺が小学生の頃とか、凄く見てたぜドラマとか。DVDあるから何度も見てたし、っていうか見せられてたし。」
それは、高校生の青春モノのドラマなんだけど、かなりおバカでそこがなんだかリアルで面白かったってなんだか真剣に語ってくれた。
「母さんにさ、正ちゃんみたいになれって言われたんだよな、子供のとき。」
「それってどういう意味?」