桃色吐息
「正平はさ、バカだけど凄く誠実でまじめなヤツなんだよ。そういうことだろ?」

お父さんはチラッとエイジ君のほうを見てそう言った。



「ちゅーか、お前は全然違うじゃんか。」

お父さんは指をさしてそうちょっとてんぱって言うから、私たちはおかしくなって笑った。



「何むきになってるの。エイジ君だってそうだよ。」

誠実でまじめなんて、まさにそうじゃないのよって、私はそう思ったんだけど、お父さんにはまだわからないんだろうなあ・・・


「あー、信用できない。」

お父さんもコーヒーを飲みながら、そんな風に腕組みをして意固地になっている。



「あれでしょ、何言ったって気に入らないんでしょ、そんなもんだよな。」



エイジ君は、相変わらずずっと笑っている。



「いいな、なんか普通の親父さんなんだなあ・・・」



私は良く意味がわからなかった。


「うちは親父いないから。」



そうやってつぶやいたのが、あれって思った。
だって、蓮は会った事あるって言ってたもの、エイジ君のお父さんに。



「え?いるよね?」

とっさにそうききかえすと

「居ないようなもんだからさ。」


なんだか複雑な環境なのかな?
そんなこと言ったら、、ビトだってずっとお父さんと離れて暮らしてたよなぁなんて思い出した。

「ここ数年、まともに話したことねぇもんな。」


エイジ君はぼんやりとそう話した。


「年頃の男子なんて、親と口きかないのは当たり前だろ。ただの反抗期じゃねーかよ。」

お父さんはそう言うけど、蓮とは仲良くしてるくせになぁ。


「蓮とは暇さえあればキャッチボールとかしてるじゃない。」



「あいつは人懐っこくておしゃべりだからな。」

そういってお父さんも笑った。



「そうだ、お昼まだでしょ? 私なんか作るね。」


なんだか少しなごんできた気がして、私はキッチンにいって食事の用意を始めた。



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