桃色吐息
さて何をつくろうかなあ・・・

エイジ君と一緒に食べたのは、そういえば麺類が多かった気がする。
暑いから、そうめんとかでいいかなあ?
でもそれだけじゃ寂しいなあ・・・


そんなことを考えながら、適当に冷蔵庫から食材を選んで、ナスとひき肉の炒め物作り、薬味を色々そろえて、そうめんを茹でた。


お父さんとエイジ君、大丈夫かなあ、チラッと後ろを振り返って様子を見ると、なんか話してるっぽいから大丈夫な気もするけど、ちょっと不安。



さっさと料理を作って、居間のテーブルに並べはじめると、エイジ君も立ち上がって、持ってくるのを手伝ってくれる。
やっぱりそういう、さりげなく気がきくんだよなあ・・・お母さんと二人暮らしだからかな?

「ありがとう。」私がそういうと、
「いや、ただ待ってるのもなんだし・・・」なんてちょっと照れている。

お父さんはえらそうに、いつものように座ったままでじっと待ってるだけだけど。

お母さんたちも、手が空いたら食べるかな? 一応呼んでみると、後で行くってまだ接客中だった。



とりあえず、三人で何気にいただきますって声をそろえながら昼食を取った。


「やっぱ美味いな・・・お前ホント料理得意なんだな。」

エイジ君がそういってニコニコしながら食べてくれるから嬉しい。


「当たり前だ、小さい頃からりんに習ってやってんだから。」

お父さんはずっとそうめんをすすってそんな風に言った。

確かに、何でも小さい頃からお母さんの真似がしたくて、色々手伝ってたなって思い出す。



「でも、私は高校生の頃なんか、何もできなかったわよ。」


そういいながら、お母さんが仕事が一息ついたのか、お店の方から戻ってきた。

お母さんは、さりげなくお父さんの隣に座ると、私の作ったお昼を食べて美味しいねって言ってくれる。


「私はね、かずなりくんのお父さんに料理習ったんだよ。」

それまでは、お湯も沸かせなかったって笑って話した。


そんなこと初耳だなあ。ずっと得意なんだと思ってた。


「でも、おじいちゃんに習ったってどういうこと?その頃はまだ出会ってないんじゃないのお父さんと。」

そんな風に聞くと、たまたま通ってた料理の専門学校の先生が私のおじいちゃんだったんだって教えてくれた。

そんな偶然ってあるんだなあ。


「私も、結婚してから思い出したんだもん、びっくりしたよ。」


「でも、それだけじゃないんだろ・・・」

お父さんが意味深なことを言うので何がって聞いたけど、教えてくれなかった。





「りんさんが高校生の頃って言うと、まだかずなりさんは小学生っすよね・・・」


エイジ君がそうきくから、そうだねえなんてお母さんが答えている。


「ああなるほどね・・・」

エイジ君は何かわかったみたいに、にやけてお父さんを見ていた。



「なんだよ、おまえんとこには、桃はやらないからな!」

ちょっとふてくされてそんなことを言うから、何気が早いこと言ってるのよってお母さんが笑った。


「まあ、二十歳になったら親関係ないっすからね・・・」

そんな風に、最後のそうめんをすすりながら、エイジ君はまた余裕で突っ込み返してお父さんを黙らせてしまった。



「ああ、小百合さんの分ないじゃん、もう一回茹でてくるね。」


そうめんのお替りをさっさと茹でると、お母さんと交代で小百合さんもこっちに来てお昼を食べていた。



「あれ、そういえば蓮はどうしたんだ。同じ学校だったよな確か。」


お父さんがいまさら思い出してそういう。
そういえば今日は部活ないはずだよな・・・またデートでもして帰ってくるのかなって思っていたら、

「彼女とデートじゃないっすかね、最近いつも一緒に帰ってるみたいだし。」

エイジ君もそんな風に言った。



「なんだよ、あいつまで彼女居るのかよ・・・」

そうお父さんがまたぼやくと、

「8つも年上の、図書館のお姉さんっすよ。」

なんて教えてあげていた。


「図書館か・・・どおりで・・・」

お父さんは何か思い出したように、ぶつぶつ言っていた。


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