桃色吐息
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エイジ君のバイト先は、裏原宿といわれる細い暗渠の歩道を抜けた一本奥のひっそりとしたところにあった。
こんなところにお店あるんだなぁってびっくりする。

夏休みは朝からシフトを入れてるとかで、私は休憩時間近くの昼過ぎぐらいにお店にひとりで行ってみた。


シンプルな、白と黒のモノトーン調の店内に、外国映画のキャラクターのフィギアが所々に飾ってある。
BGMはどこかで聞いたようなパンクロック、真夏でも皮のライダースとかがいっぱい吊るされていて、お店の真ん中には、色々な種類のTシャツが畳んで沢山置いてあった。


私を見つけると、エイジ君はいらっしゃいと笑顔で声をかけてくれる。
お客は私だけで、後は他の店員さんがもう一人いるぐらいだ。


「一人で大丈夫だったか?」

心配してそういってくれたけど、大丈夫だよって答える。
結構一人でどこでも行けるんだよ、その気になれば。

「あ、でも表参道の交差点あたりで、色々声かけられたなあ・・・」

エイジ君と2人でいたときはそんなことなかったのになあ。

モデルになりませんかとか、芸能界に興味ないかとか、昔もよくうちにまでスカウトに来てたっけ。
絶対やりたくないから、片っ端から断ってたのを思い出した。

「やっぱなあ・・・」

エイジ君がちょっと頭を抱えているけど、そういう過保護なとこお父さんみたいだよってちょっと思う。


「エイジ、その子が彼女か?」

もう一人の店員さんが声をかけてきたので、こんにちわって挨拶をする。

「そうっす。」

エイジ君はちょっと照れたように私を紹介してくれて、店長の岩渕さんだって教えてくれた。


それにしても、お洒落すぎて緊張する店だ。
カッコいいシャツを見つけて値札を見てみると、数万円もするのでちょっとびっくりした。


「暇だし、ちょっと早いけどランチ行ってきていいぞ。」

岩渕さんがそういってくれたので、私たちはいそいそとランチに行くことにした。



「そうだ、お弁当作ってきてみたんだけど・・・」

だけど、どこか食べるところあるかなって悩んでいたら、近くに公園があるってそこまで連れて行ってくれた。


「あそこなら、コーヒースタンドも出てるしな。」

裏原の真ん中にある公園の脇には、ワゴン車でコーヒーを売ってる店があって、そこのベンチが丁度いい感じに空いていた。
木陰にもなっていて、そんなに暑くもないし。

私たちは、そこでアイスコーヒーとアイスラテを買ってベンチについてお弁当を広げた。
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