桃色吐息
「わあ、すげえ・・・」

ちょっとがんばりすぎたのか、渋めの二段重にぎっしりとおかずとおにぎりを入れて持ってきてしまって、引かれるかと一瞬思ったけど、エイジ君は喜んでくれた。

「ゴメン、ちょっと作りすぎちゃったかも・・・ああ残していいよ、残ったの蓮に食べてもらうし。」

朝からお母さんに手伝ってもらって、おにぎり握ったんだよなあなんて思いだす。

「大丈夫、全部食べる。」

私の作った卵焼きを一口食べて、うまいってにっこり笑ってくれた。

「あ、そういえば嫌いな食べ物とかあったかなあ?」

筑前煮とか、ちょっと渋めのおかずも入れちゃったから大丈夫かなと思ったけど、好き嫌いは無いと言ってくれて一安心。


「お前の作ってくれるのは、何でもうまいなあ・・・なんでかなあ・・・」

たらこのおにぎりをほおばりながら、エイジ君は空を見上げてつぶやく。

なんだか嬉しいなあ、私もエイジ君と一緒に居ると、何でも美味しいと思うよ。


「コーヒーも、お前が淹れてくれた方がうまい。」

そう言いながら、さっき買ったアイスコーヒーも飲んでいる。
でも、ここのコーヒーも美味しいけどなあ・・・


「よかった、なんかやりすぎちゃったかと思って、ちょっと不安だった。」

こんなに喜んでくれるなら、また作ってこようかななんて思っていたら、
「また作ってくんないかなあ。」
エイジ君の方からそういってくれた。


「じゃあ、いつものお礼に、エイジ君がバイトのときは作ってこようかな?」

そうすれば、バイトで会えないなんて事もなくなるし、会える口実になる。


「え?俺なんかしたっけ、お礼されるようなこと。」


不思議そうにそうきかれるので、ああこの人はいつもほんとに自然に色々とやってくれてたんだって気付く。

「いつもわざわざ学校まで迎えに来てくれたじゃない。それといつも色々ごちそうになったり、あ、あのガンちゃんも・・・」

そうだよ、交通費だってきっとバカにならないよ、高校生にとっては。

「ガンちゃん?」

あ、イワトビペンギン名前付けたの言うの忘れてた。

「あのぬいぐるみ、岩飛びペンギンだからガンちゃんって呼んでるの。」

そっかと言って、また私をぬいぐるみみたいに頭を撫でてくれる。
これされると、弱いんだよなあ・・・



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