桃色吐息
「なんか手伝う?」

私が一人で料理をしていると、隣にエイジ君が来てくれた。

「あ、大丈夫だよ、あっちで座って先に食べてて。」

そう言ったんだけど、あっちにいると飲んじゃうからって、ずっと私の隣に何をするでもなく居てくれた。


ちゃんと約束守ってくれるんだな・・・


「あ、これ切ればいいの?」

洗っておいたキャベツを取って、適当に切ってくれる。
結構なれてるっぽくてびっくりした。

「エイジ君、料理とかするの?」

「ああ、腹減ったら適当にうちにあるもんでなんか作ったりするな。チャーハンとかラーメンとか。」

なんだか、男の子っぽい料理だな。

「お前はホント、料理好きなんだな。そういう仕事すればいいのに・・・」

家事だって、立派な仕事なんだけどなって思うけど、そうだな、プロの料理人とかパティシエとかになるっていうのも面白いかもなってちょっと考えた。

「そうだねえ・・・ でも今は、うちの手伝いしてるだけでもいいや、お母さん忙しいからね。」

お母さんがやりかけていたポテトフライの火加減を見ながら、丁度いい塩梅で救い上げて、クレイジーソルトをまぶして盛り付ける。

エイジ君が切ってくれたキャベツはそのまま盛り付けて、マヨネーズと味噌とかで作ったソースを添える。

後ろの方から、カオリさんたちのにぎやかな声が聞こえて、楽しそうだ。

エイジ君の方を見ると、自然と目が合ってなんだか照れていると、勝手口のドアが開いてお父さんが帰ってきた。


「ただいま・・・」

「あ、お帰りなさい。」

2人で声がそろってしまってそう言うと、お父さんがびっくりしてエイジ君を見つめたまま固まってしまった。



「お前、また来たのか・・・ちゅーか何時だと思って・・・」

そういいかけて、みんなが向こうで宴会をしている様子を見て、ああしょうがないかって文句を言うのをあきらめてくれたっぽい。

「今日は蓮の彼女も来てますよ。」

エイジ君がニヤついてそう言うと、お父さんはどの子だよって急に態度を変えて、さっさと居間の方に行ってしまった。


「相変わらず面白いな、かずなりさん。」



あ、そういえば、あのシャツもエイジ君が選んでくれたんだっけ?
おとうさんによく似合うあのシャツ、結構よく着てるんだ、仕事の時とかに。

「お父さん、例のシャツよく着てるよ。気に入ってるみたい。」

「そうかよかった。あの人、服とかに無頓着そうだからな・・・」

よくわかってるな・・・ほんとそうなんだよ、何でもいいんだよね、もらったもの絶対着るもの。
でも、なんかエイジ君の選んだシャツは、特別っぽいなって気がするんだ。私がそう思うだけなのかもしれないけれど。

「このTシャツも凄く好きだったの、欲しかったんだあ・・・ありがとうね。」

「お礼はジュンさんに言えよ、俺が買ったんじゃねーもん。」

そんな風に照れながら言ってくれる。

「でも、誕生日買ってやろうと思ってたんだけどな、どうしようかな・・・」


ああ、来月の私たちの誕生日かあって思い出したら、なんだかあの約束を急に思い出して顔がほてってくるのがわかった。




「おい、お前たちもこっちにきなさい。」

お父さんにそう呼ばれて、私たちはさっき作った料理と飲み物を持って、宴会の輪に加わった。





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