桃色吐息
「うわー行ってみたい、エイジ君のお父さんってどんな人なんだろう?」

そういえばまだ会ったことないんだよなあ・・・
エイジ君に似てるってよくきくから、かっこいいのかなあ?


「びっくりするぐらい、エイジ君にそっくりだよ。」

「私も、そういえばなんかのライブで見たことあるなあ、テツさん凄いパンクって感じだよね。」



二人はちゃんと知ってるんだな、有名人なんだろうか?


「あ、そういえばこの前写メ撮ったから、写真あるよ。」


カオリさんがスマホの画面でその写真を見せてくれると、カウンターに座るレンと、カウンターの向こうで何か料理でも作っているっぽいエイジ君のお父さんが、カメラ目線で微笑んでいた。


「ホントだ、そっくり・・・かっこいいなあ・・・」


思わずそんな声が漏れてしまった。


「働いてる姿もかっこいいけどさ、バンドで歌ってる姿も、めっちゃかっこいいよ。
ああ、でも雷神のライブは危ないからなあ・・・桃ちゃんつれてきたいけど、エイジ君にしかられそう。」



ライブかあ・・・あの人も来るんだろうなって思ったら、何だか複雑な気持ちになった。

リンダさんって、綺麗な人だったよな・・・ 手足長くて細いし、あのミニスカート似合ってた。
きっとあの人が着てる服だったら、売れるんだろうなあ・・・

あまりにも,あの人とキャラの違う私に、どうしてエイジ君は好きだといってくれたのか、何だか不思議になってくる。



「ねえカオリ、それってまずいんじゃないの・・・」

ナホさんが何か知ってるみたいで、カオリさんに耳打ちしているのが聞こえてしまった。

カオリさんは、何か思い出したように気まずい顔で苦笑いしている。



「あぁ~でも桃ちゃんまだ高校生だから、居酒屋は無理だよね~」


「お酒飲まなきゃ大丈夫ですよ、だって蓮も行ったんでしょう?」

ああそうだって、蓮と私が双子だってことをいまさら思い出している。



「ああ、もうごめん、私隠せないや。
あのさ、あの店ね、リンダちゃんも常連なんだよ、だから行くとたぶん会っちゃうよ。」


「カオリさんも知ってるんですね、あの人のこと。」

二人はいっぺんに複雑な顔をして変に慰めてくれる。


「私はその子のこと知らないけどさ、もうエイジ君と関係ないんでしょ?
気にすることないよ、今はあんなに桃ちゃんとエイジ君仲良しじゃん。」


ナホさんがそんな風に言ってくれるけれど、私はエイジ君の気持ちもわかるもの。

だって、私と同じだから、きっとずっと忘れられない、嫌いになれない人だろうから。



「きっとエイジ君、まだあの人のこと好きなんですよ。
だって、私と居る時と、態度が全然違ったんだもん。」


そして、2人にこの前ばったり会ってしまったことを話してしまった。

あの少年のようなはにかんだ顔・・・ あの時の彼が、脳裏に焼きついて離れない。



「でも、それがきっかけで付き合えることになったんでしょ?
どう転がるかわからないもんだよね・・・」

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