桃色吐息
「なあ桃、最近はなにもないか?さっきの奴が言ってたようなこと。」

エイジ君はまた心配してそんなことをいってくれる。

「大丈夫だよ、そんなに心配ばっかしないで。私も普通に、一人でどこにでもいこうって決めたんだから。」


そうだよ、エイジ君に甘えてばかりはいられないよ、私も他になにか夢中になれることを探そう。

最近はとりあえず、毎日のように作るお弁当が楽しみのひとつだ。


明日は何食べたいって聞くと、唐揚げって答えてくれるので、じゃあ今夜から仕込まなきゃって思いめぐらす。

「あの味付け、何入ってんの?」

うちの唐揚げは、おじいちゃんがお母さんに教えたらしい本格的な和風の味付けだから、ちょっと普通のとは違う。
アクセントに山椒が入っている。

そう教えてあげると、なるほどなって嬉しそうに笑った。



いつのまにか手を繋いで、その繋いだ手を子供のように振ると、なんだか楽しくなってまたあのときのように走り出したくなる。


もうすぐ駅についちゃうなぁ…

今日は一人で帰ろうと思ったんだけど



「送ってくよ。」


寂しいと思うと、そんな気持ちをすぐにわかってくれる。







またうちの最寄り駅まで一緒に来てくれると、いつものように改札口で別れた。



「じゃあまた明日ね♪」


「じゃあな、気を付けろよ。」



私の家はもうすぐそこなのにな。


「エイジ君も気を付けてね。」


なんだか別れがたくて、何度も振り返ってしまうけど、エイジ君は今日もやっぱり見えなくなるまでずっと手を振っていてくれた…

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