白の世界 (幼少期編)





目を覚ますと、車が丁度止まる頃だった







「お、起きたか?」





どれほど寝ていたのか、




この男の声を聞き、今までの出来事が夢では無かったことが知れる







まだ、しっかりと覚醒していない私を男は再び抱える





いわゆるお姫様抱っこなのだが、私にそれを手伝う義理はない






だから、腕をこの男の首にまわすなどするはずもない






しかし、そんなことはお構い無しに車を降りる






だかれていることに抵抗するのはもう無駄だということを悟った私は暴れることはしなかった






「じゃあ若、車停めてきます。」






「おう」







軽く返事をして大きな門をくぐり抜ける






門と玄関は思いのほか離れており、そこには池すらある。






これが家であるなんて甚だ信じ難いことだ





スライド式の玄関を開けると、スーツを着た強面の男達がずらりと並ぶ






『おかえりなさいやせ!若!』






練習でもしていたのだろうか、





なんとも奇妙な程に揃った声に少したじろいだのがこの男に伝わってしまったのか、クツクツと笑う






この光景をみて、この男が偉い人なのだと気が付かないほど私は鈍感ではない






明らかにこの男よりも年が上の人が、頭を下げている





深々と下げた頭をあげた男達の視線が私に向く







異物を見るような視線






それが、私がこの人達を奇妙だと思うことが間違っているということを知らせる







「(ああ、おかしいのは私か、)」








ここでは私こそが奇妙だった






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