白の世界 (幼少期編)
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マナミside
パタリと閉じられた目の前の扉を、こなれた手つきでお気に入りのオレンジジュースを口に含みながら見送った
"彼女"、つまりは"日比野 白"について綴った先程のファイルを再び開く。
「また、面倒なのを拾ったなー。日比野くんのアホさにはあっぱれだね」
日比野くんは昔からそうだった
昔というか、なんというか
まあ、あれだ。組の頭になる前の話。
日比野くんがまだ、髪の色が赤かった頃の話
頭はいいのに、人が良すぎて、ただのバカ
僕は、人は騙される方が悪いという考えの持ち主ではあるが、あれに関しては騙されているという自覚がないということに憐れみに似た感情を抱かざるをえない
まあ、あれだよ。
日比野くんが、まだ髪が赤かった頃に、僕はただの新人の医者だっただけだ。
いや、ただのではないか
偽物だったといえる。