ハッピーメリークリスマス【短編】
▽▲▽▲▽
「アスカ、今年もクリボッチかよ」
ニヤリ、とイヤミな顔で笑った隣の男は、幼なじみ兼隣の家に住む隣人のリュウ。
「うっさい、ほっとけバカ」
その歪んだ表情でさえ整って見えるのだから、イケメンは罪だ。
「だいたい、クリボッチのなにが悪いの?
ただ12月25日に予定がなくて一人でいるだけじゃん」
口を突いて出るのは、可愛くない言葉。
本当は、聖なる日なんだから好きな人と一緒にいたい、とかキャラじゃないことを考えちゃってるくせに。
「そんな事言ってるから彼氏できねーんだよ」
何気ないリュウの言葉が、突き刺さる。
うっさい、バカ。
別に『彼氏』が欲しいんじゃない。
ただ、私の好きな人に、私の事を好きになってもらいたいだけ。
これを友達に言ったら『アスカのくせに乙女』だって笑われたけど。
「別に、ほっといてよ。
あんたは花村さんとデートでも行ってれば?」
言ってしまってから、すぐに後悔した。
違う、こんなことを言いたかったんじゃない。
クリスマス、一緒に過ごそうって。
どこにも行かなくていいから、一緒にいたいって、たったそれだけを伝えたかったのに。
「は?なんで知って………。
そんな事言うんだ。
じゃ、もういいよ」
不機嫌そうな顔で、リュウは隣の家へと入っていった。
それ以来なんとなく気まずくて、うまく顔を見れないまま、ずるずる、ずるずる引きずって。
結局、クリスマスを迎えてしまった。
▽▲▽▲▽