君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
璃子のことも気になるけど、

わたしには、もうひとつ…

心に引っかかっていることがある。

もちろん、桐生くんのこと。

昨日も今日も、桐生くんの

態度にはムラがある気がする…

昨日は避けられてると思ったけど、

学校に着くまでは、

いつもの優しい、桐生くんだった。

でも、学校に着いた途端に

また苦しそうな表情になってた。

昼休みになった途端、

席を立ったまま、戻ってこないし…

いつもなら、日向くんと仲良く

購買に行って、帰って来てるのに。

どこ行っちゃったんだろう?

そういえば、いつも昼休みになると

チャイムの音が鳴り止む前に

教室に来る、日向くんが

今日はまだ来てない…

そうだ…

幼馴染の日向くんなら

知ってるかもしれない。

桐生くんの様子がおかしい理由…

勝手にいろいろ聞くのは

駄目なことかもしれないけど…

でも…

わたしは、璃子と聖奈ちゃんに

何も言わず廊下に飛び出した。

向かう先は…

もちろん、日向くんの教室。

いるかなぁ?

わたしの突然の行動に驚いたのか、

璃子と聖奈ちゃんも、

こちらに駆け寄ってくる。

「流羽っ!どしたの、急に…」

「日向くんにちょっと聞きたいことが
あって…」

わたしは、璃子の声に

振り返らないまま、教室の中に

目を配る。

あっ、いた!

わたしは、周りの目も気にせず

日向くんの席に向かった。

そこには、やっぱり桐生くんは

いない…

璃子も聖奈ちゃんも、

わたしの後に続いて教室に入る。

「日向くん…聞きたいことがあるんだけど、

少しいいかな?」

「ん?なになに?どしたの?」

「桐生くんのことで…

気になってることがあって」

「へっ?翼?

翼がどうかした?」

ニコニコ笑う日向くんを見て、

わたしは気になっていた事を話した。

「昨日から桐生くんの様子が

いつもと違う雰囲気なの…。

今朝、学校までは

いつもの桐生くんだったのに、

下駄箱に着いた瞬間に

また雰囲気が違って見えたの…

わたし何かしちゃったのかな?」

わたしの言葉に日向くんは

固まってしまった。

そして、なぜか璃子に視線を送る。

「あーあのー…それは…」

目を泳がせて必死に言葉を探す

日向くんが璃子に視線を送った。

日向くんの視線の先にいる璃子も

困惑していて、わたしは確信した。

わたしに言えない

何かが起きてるんだと。

璃子はわたしに隠し事はしないし、

嘘もつかない。

言いたい事や思う事ははっきり言うのが

璃子なのに、どうしてそんな顔するの?

璃子がわたしに言えないことってなに?

「璃子…何が起きてるの?

桐生くんの様子が変な事と

何か関係あるの?」

わたしの言葉に

2人の顔が青ざめていく。

やっぱり何かが起きてるんだ。

「流羽…ちゃんと話そうと

思ってたんだけど、今ここでは

話せないし授業も始まるから

放課後でもいい?」

「璃子っち…」

わたしと璃子を

心配そうに見る日向くん。

横に立つ聖奈ちゃんも、

どこか様子がおかしい…

ぼやけていた不安の塊が、

一気に輪郭をはっきりとさせた。

きっと、わたしのことで

なにかが起きてる。

そう考えると、昨日の桐生くんの

苦しそうな表情も、

不思議な行動を取った璃子も、

いつも元気な聖奈ちゃんの

泣きそうなあの顔も、

今、こうして、心配そうな顔で

わたしを見る日向くんも…

全部、繋がる。

「うん、分かった」

わたしは笑顔で返事をした。




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