君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
近づく心と離れる気持ち
今わたし達のクラスでは

来たる6月の体育祭に向けて

各種目の選出に勤しんでいます!

「クラス対抗リレーと借り物競争です!

立候補する人いませんか?」

うちの学校では

クラス対抗リレーと借り物競争は

クラスで選出してした人が出るけど、

騎馬戦は男子のみで、綱引きは

クラス全員での参加と決まっている。

なので、今はリレーと

借り物競争に出る人を決めている…

のだけど…

なかなか決まらない。

どうしたものかと考えるけど、

嫌がる人が過半数で、

残りの人はお喋りをして

聞いていない様子。

本格的にまずいなぁと思ったとき…

「おまえら、早く決めないと

またくじ引きすんぞー!」

先生の一言で教室が

ざわざわし始める。

あわわっ!!

こういう時のまとめ役が

わたしの仕事なのに!!

どうしよう…

わたしは思わず

桐生くんに視線を送る。

「優勝したクラスには

賞品が出るらしい」

すると隣にいた桐生くんが

言った一言に、

ざわついていた教室が静まった。

そして、あれよあれよというまに

残りの種目に出る人が決まった。

すごい…

賞品という名のご褒美にみんなが

湧き立つ。

「ちなみに賞品って何があたんの?」

「わたしも気になるー!」

一斉に質問攻めにあう桐生くんは…

「さぁ…なんだっけ」

シレっととぼけて明後日の方向に

視線を向けた桐生くん…

えぇー!?

そこでとぼけるの!?

わたしは内心、あわあわしていた。

見兼ねた先生から出た言葉…

「名誉あるトロフィーだ!

いいだろ!」

ドヤ顔で胸を張っている先生。

あぁー…みんな固まってる。

でもみんなで頑張った証が

トロフィーに刻まれるのは

嬉しい事だと思うんだけどな…

「体育祭で優勝出来たら…

頑張った事が認められたような

気がして嬉しくなりませんか?」

わたしは今まで大勢の前で

声を上げる事が出来なかった。

今だって手も足も震えてしまう。

でも…

強くなりたいと、あの時誓ったから。

その時…

ギュッと手を握られた。

っ!!

思わず桐生くんを見上げると

穏やかな眼差しで

見つめる綺麗な瞳に

わたしの心臓は

ありえないくらいに

ドキドキした。

教卓の下で震えていた手は、

温かい桐生くんの

大きな手によって

収まっていった。

わたしはその手の温もりに

包まれながら、

桐生くんに笑顔を見せた。

ありがとう…

でも、突き放したわたしに

優しくなんてしないで…

こんな風にされたら、

ますます気持ちが

おさまらなくなる。
< 41 / 102 >

この作品をシェア

pagetop