君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
真っ直ぐな気持ち
体育祭が終わって、もう6月も半ば。

日に日に気温が上がって

もう、すぐそこまで、

夏が迫っている…

容赦なく照りつける太陽が

半袖からのぞく腕を

ジリジリと焦がす…

今日も正常運転の璃子は

もちろん遅刻だ。

あれは、もう…

一種の才能かもしれないな。

そんなことを考えながら、

1人、通学路を歩く。

「それにしても、暑いな…」

うっすらと滲む額の汗を拭き、

眩しい太陽を見上げると

あまりに強い日差しで…

わたしは、真っ直ぐで強い瞳の

桐生くんを思い出していた…

そういえば、もうすぐ

バスケ部の練習試合があるって

先生から言われたっけ…

レギュラーである

桐生くんのデビュー戦だ。

元々、中学からバスケ部の

桐生くんは、贔屓目なしに

すごく上手い。

バスケが全くわからない、

わたしでも、分かるくらいに。

パスも、ドリブルも、シュートも、

そのどれもが洗練されていて

無駄がなくて…

見惚れるほど、綺麗なんだよね。

マネージャー業をこなしながら

こっそり見るのが、わたしの

習慣になっている。

厳しい練習にも

顔色ひとつ変えずに、コートを

縦横無尽に走る姿、

汗を拭う男の子らしい、

たくましい腕…

その全てが

本当にキラキラしていて

眩しい…

一生懸命な姿は、周りにも

影響するもので、

レギュラーになれなかった

部員の人達にも

良い刺激を与えている。

だから、わたしも

そんな、みんなを応援したくなるし

頑張ろうって思える。

その日の放課後。

部活に励むみんなを見守りながら

わたしも仕事に専念していた。

わたしの一件があった直後、

時田先輩はバスケ部を

辞めてしまった。

本人からも謝ってもらったし、

わたしは、まだまだ未熟者だから

先輩からたくさんのことを

教わりたかったんだけど…

けじめをつけたいからと

断られてしまったのだ。

でも、やっぱり

時田先輩の抜けた穴は大きくて

わたしも璃子も、毎日クタクタだ。

それでも、辞めたいなんてことは

思ったことは、1度もなくて…

だって…

頑張ってる人を見ると

わたしも頑張ろうって

思えるんだもん。

自分に出来ることはないか?

みんなが気持ちよく練習に

打ち込めるように、もっと

出来ることが

あるんじゃないかって…

それで思いついたのが、

部員全員のプレイノート。

練習メニューやシュートの本数、

どの角度から打つのが得意か、

先生からのアドバイスを受けて、

それが出来ているか…

苦手なこと、得意なこと、

とにかく、目に付いたことを

全て書き留めたノートは、

全部で30冊。

部員が30人だからね。

璃子にはめんどくさそうって

言われたけど、わたしは

全然そんなことなくて…

むしろ、みんなのことが

知れる大切な作業だったりするの。

一生懸命な人に対して

中途半端なことは

できないって思う。

だから、今日もわたしは

自室で机に向かい、ノートを広げる。
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