君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
部活が始まり、

わたしは習慣になっている

部員ノートに細かく記入しながら

本来のマネージャー業を

黙々とこなしていく。

キュッ…キュッ…という

バッシュの音と、ダンダンと床に

叩きつけられるボールの音…

そして、コートの中で

汗だくになりながらも

懸命に走る、部員達。

その中に、桐生くんの姿を

視界に捉えた。

同じ時間を過ごしても

どこか遠い存在だったはずの

桐生くんが、今はすごく

近くに感じられるのは、

自分の気持ちに、真っ直ぐに

向き合ったからかな?

ううん、違うかな…

桐生くんが、向き合ってくれて

ただ真っ直ぐに…

わたしを想ってくれたから。

固く閉ざした、わたしの心を

優しく溶かしてくれたからだよね。

『どんな過去があったとしても

春瀬が春瀬である限り』

その言葉を聞いたとき…

わたしの心を占領していた

負の感情…

【わたしといることで

嫌な思いや苦しい思いを

させたくないし、したくない】

その感情が消えて

傍に居たいって思う、素直な

気持ちが溢れたんだ。

表面張力で保たれたコップの水が

一滴の雫によって

溢れてしまうように…

今は溢れる気持ちを

隠さなくてもいいんだよね。

言葉にできない…

伝えられない…

それが、どうしようもなく

苦しくて、切なくて…

伝えたことによって

関係が悪くなったり

迷惑になることが、怖かった。

他の誰でもなくて

大切で、大好きだからこそ

1歩が踏み出せなかった。

桐生くんが、わたしを特別だと

言ってくれたように、

わたしにとっても、桐生くんは

特別で無くしたくない存在だから。

いくつもの言葉を飲み込んで

心に隠してきた想い…

その気持ちごと、桐生くんは

受け止めてくれた。

わたしにとって、それは

奇跡みたいなことだったの…

わたしに【好き】をくれて

教えてくれた。

だから…

真っ直ぐに向かってきてくれた

桐生くんに、わたしも

自分の心に真っ直ぐに

向き合うね。

桐生くん…

わたしはキミの背中に見えた

輝く翼に恋をしました。

そして、これから何度でも

恋をする。

傍にいる限り、ずっと…







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