君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
「おいっ!金出せよ!」

「金さえくれたら、何もしねーからさ」

威圧的な声…

これって、もしかして…

カツアゲ!??

声のする方に、目を走らせると

そこは、ホームからさほど

離れていない公園からだった。

街灯の下に、3人の人影が見え、

そのうちの1人は、他の人より

少し背の低い子で…

「あんたらにやる金なんて、

持ってない!」

鞄を胸に抱えて、必死に

抵抗する男の子が見えた。

ど、どどうしよう!!

警察に電話する?

でも、間に合わないかも…

怖いけど、見て見ぬふりなんて

出来ない!

わたしは、ポケットに手を入れ

110番をして、素早く状況を伝え、

すぐに来て下さいと、電話を切った。

そして…

公園に足を踏み入れ、叫んだ!

「その子から離れて下さい!

警察も呼びました!」

わたしは、男の子と2人の

男の人の間に、身体を滑り込ませ

睨みつけた。

近くで見ると、大きいし

いかにもって感じの、ガラの悪そうな

男の人達に、足がすくむ。

けど…この子を助けなくちゃ!

「なんだ?おまえ。

ってか、ちっせー女だな!」

「なら、あんたが代わりに

金出せよ。

痛い目に遭いたくないだろ?」

すごい睨みをきかせてくる

2人に、負けじと睨み返す。

「あなた達に渡す、お金なんて

一銭もありません!」

わたしの言葉に腹を立てたのか、

1人の男に、ぶたれた。

バシンッ!!

一瞬のことで、受け身を取れなかった

わたしは、その場に倒れた。

「いてて…」

口元にピリッと、痛みが走る。

口の中に広がる、鉄の味…

あー…切れちゃったかな。

「大丈夫ですか!?

あっ…口の端、切れてる」

わたしの肩を支えてくれた、

男の子は、眉を寄せて

今にも泣きそうな顔をしている。

「大丈夫だよ。

わたし、こういうのには

慣れてるから」

安心させたくて言った言葉を

驚いた表情で見る男の子。

すると、男の子は立ち上がり、

「これで勘弁して下さい」と、

お財布から、お金を引き出した。

「駄目!!」

立ち上がって、その手を掴んだ。

「こんな人達に、大切なお金

渡すことないから!

それに、警察も呼んだから」

そのとき、一瞬の隙をつかれて

男の子の手から、お金を取ろうと

手を伸ばした男の手を、

わたしは、力のかぎりに

叩き落とした。

その瞬間…

ドスッ!!

わたしの足に蹴りを入れた

もう1人の男。

でも、わたしは痛くも痒くも

なくて。

だって…

男が蹴ったのは、義足だったから…

こんな時に、義足が役に立つなんて

わたしも運がいいんだか、

なんなんだか…

笑えてくるな。

「なんだ、コイツ!

蹴られて、笑ってやがる」

不気味な物でも、見るかのように

男達が後ずさりした。

そのとき…

ウーウーウー…

「やべー!警察だ、行こうぜ!」

パトカーが着いたと同時に

逆方向に走り出した男を

指差し、わたしは叫んだ!

「お巡りさん!あの人達です!

あっちに逃げました!」

近くまで来た、お巡りさんが

ここで待つように告げて、

男達を追いかけて行った。

あー、良かった…

安堵の溜息をついて、ハッとした。

男の子!!

慌てて振り返り、

「怪我してない?」と、

わたしが笑顔で尋ねると、

男の子は、無言でわたしの

手を取って、近くのベンチに

座らせてくれた。

わたしの前に、しゃがみこんだ

男の子は、ポケットから

ハンカチを取り出して、わたしに

差し出した。

「俺のせいで、怪我させてしまって

ごめんなさい。

女の子に守られるなんて…

俺、男なのに」

悔しさを滲ませて、呟く男の子の

頭を撫でた。

バッと顔を上げた男の子の顔を

初めて、ちゃんと見たわたしは、

その顔立ちに、既視感を覚えた。

誰かに似てる気がする…

まぁ、誰でもいいか。

「誰かが困ってたら、男の子でも

女の子でも、関係ないよ。

それに…こういうの、慣れてるから

全然平気!」





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