君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
わたしの言葉に、驚きの表情を
見せる男の子。
「あっ、慣れてるっていうのは、
ケンカとかじゃないから…
それより!ご家族の誰かに迎えに来て
貰おう?
お家は、どの辺?この近く?」
「俺の家は、ここから歩いて20分
くらいのところだけど…
1人で平気です。
それより…足、大丈夫ですか?
蹴られました…よね」
そう言って、今にも泣きそうに
なる男の子。
怖いめにあったのに、わたしの
心配ばかりしてる。
「蹴られても痛くないの。
だから、気にしなくて大丈夫だよ!」
「…慣れてるから、ですか?」
真剣な表情で尋ねてくる男の子に、
わたしは、はっきりとした口調で
答えた。
「ううん、慣れてるのは
昔、叩かれたりした事があるから、
免疫があるってだけで…
足は…義足だから、痛みを感じないの」
わたしは、自分の足を叩いてみせた。
コンコンッ…
「ね?さすがに、逆の足だったら
痛かったかもしれないけど…
義足の方だったから、痛くないの。
逆に蹴った、あの人の方が
痛かったかも」
わたしが笑って話すと…
「いくら…義足でも、痛くなくても
大人の男の人に蹴られて、
怖かったはずです!
それに、口元も切れてる…」
揺れる瞳を見て、昔、太一を
いじめっ子から助けた時のことが、
頭に浮かんだ。
あの時、太一も同じような顔してた。
『僕のせいで、ごめんね』って、
泣きそうな顔して…
「そんなに心配しなくても、
大丈夫だよ!
キミ、名前は?何年生?」
雰囲気を変えたくて、わたしは
男の子に質問した。
「桐生晴人、中学3年」
「えっ…、桐生?
もしかして…お兄さん、いたりする?」
コクンと頷いた男の子の顔を、
わたしは、ジッと見つめた。
さっき感じた既視感は、
間違ってなかったんだ…
どことなく、雰囲気が似てる。
桐生くんの中学時代って、
こんな感じだったのかなぁ?
「お姉さんは?
名前なんていうんですか?」
「えっ!?わたしは、あのー
名乗るほどでもないから!はは…」
「そういう訳にはいきませんよ!
後日改めて、お詫びさせてください!」
「気持ちだけで十分だから、
本当に気にしないで?」
わたしの返事に不服なのか、
眉間に皺を寄せる、晴人くん。
律儀な子だなぁ…
そのとき、
お巡りさんが、戻ってきて
色々聞かれたあと、それぞれの家に
送ってもらうことになった。
帰り際に、わたしは晴人くんに、
ひとつ、お願いをした。
「晴人くん…ここで、わたしと
会ったことや、わたしがしたことは
誰にも内緒にして欲しいの。
いいかなぁ?」
桐生くんが知ったら、きっと
心配させちゃうだろうし…
なんで自分を頼らないんだって、
怒られるかもしれない。
わたしの気持ちが、通じたのか、
晴人くんは頷いてくれた。
「でも、家には連絡いってるから、
絶対とは言えないですけど…
さっき、そういえば兄ちゃんの
名前、知ってましたよね?
もしかして、知り合いですか?」
射抜くような瞳で、見つめる
晴人くんは、やっぱり桐生くんに
そっくりだ…
誤魔化しや嘘は、通用しない。
わたしの個人的な理由で、
晴人くんを巻き込むのは、
駄目だよね…
「あ、あのね…わたし、
お兄さんの、彼女なの。
こんなのが、彼女でごめんね」
伺うように、見つめると…
「えっ!?兄ちゃんの、彼女?
もしかして、今度の日曜に来る…
春瀬さん…ですか?」
心底驚いた表情で、目を大きく
開いている、晴人くん。
義足の彼女なんて、やっぱり
反対だろうな…
あんなにカッコイイ人の彼女が、
こんなで、ガッカリさせちゃったかな?
「俺、兄ちゃんが彼女連れて来るって
聞いてたんです。
だから、どんな人だろうって…」
あー…やっぱり、
がっかりしたよね。
でも、今更隠しても仕方ない。
これが、わたしで
義足である事は、変えられない…
あんなに、待ち遠しかった
お家デートも、
もう無理かもしれない。
下を向いて、うなだれたとき
「聞いてた通りの人でした」と、
優しく笑う表情は、桐生くん
そっくり。
「あの、聞いてた通りって?」
わたしが首を傾げると…
晴人くんは笑顔でこう言った。
「自分が辛い状況でも、いつも
周りに優しく出来る、
強い人だって」
桐生くん、そんな風に思って
くれてたんだ…
嬉しいけど、なんだかむず痒い!
そんな大層な人間じゃないのに…
「桐生くんは、わたしの全部を
受けとめてくれた…
初めて、好きになった人で。
わたしには、もったいないくらい」
晴人くんは首を振った。
「兄ちゃんが、春瀬さんを
好きになった気持ち、
よく分かります。
日曜日、楽しみにしてます!」
優しい笑顔で、手を振って
お巡りさんと去っていく後ろ姿を
わたしは、笑顔で見送った。
お巡りさんと連れ立って帰った、
わたしに、愛子さんは
びっくりしたまま固まって、
太一には、ものすごい勢いで
怒られた。
『なんで連絡しなかったんだ』って。
いつもと逆の立場になって、
約1時間にも及ぶ説教が、続いた。
見せる男の子。
「あっ、慣れてるっていうのは、
ケンカとかじゃないから…
それより!ご家族の誰かに迎えに来て
貰おう?
お家は、どの辺?この近く?」
「俺の家は、ここから歩いて20分
くらいのところだけど…
1人で平気です。
それより…足、大丈夫ですか?
蹴られました…よね」
そう言って、今にも泣きそうに
なる男の子。
怖いめにあったのに、わたしの
心配ばかりしてる。
「蹴られても痛くないの。
だから、気にしなくて大丈夫だよ!」
「…慣れてるから、ですか?」
真剣な表情で尋ねてくる男の子に、
わたしは、はっきりとした口調で
答えた。
「ううん、慣れてるのは
昔、叩かれたりした事があるから、
免疫があるってだけで…
足は…義足だから、痛みを感じないの」
わたしは、自分の足を叩いてみせた。
コンコンッ…
「ね?さすがに、逆の足だったら
痛かったかもしれないけど…
義足の方だったから、痛くないの。
逆に蹴った、あの人の方が
痛かったかも」
わたしが笑って話すと…
「いくら…義足でも、痛くなくても
大人の男の人に蹴られて、
怖かったはずです!
それに、口元も切れてる…」
揺れる瞳を見て、昔、太一を
いじめっ子から助けた時のことが、
頭に浮かんだ。
あの時、太一も同じような顔してた。
『僕のせいで、ごめんね』って、
泣きそうな顔して…
「そんなに心配しなくても、
大丈夫だよ!
キミ、名前は?何年生?」
雰囲気を変えたくて、わたしは
男の子に質問した。
「桐生晴人、中学3年」
「えっ…、桐生?
もしかして…お兄さん、いたりする?」
コクンと頷いた男の子の顔を、
わたしは、ジッと見つめた。
さっき感じた既視感は、
間違ってなかったんだ…
どことなく、雰囲気が似てる。
桐生くんの中学時代って、
こんな感じだったのかなぁ?
「お姉さんは?
名前なんていうんですか?」
「えっ!?わたしは、あのー
名乗るほどでもないから!はは…」
「そういう訳にはいきませんよ!
後日改めて、お詫びさせてください!」
「気持ちだけで十分だから、
本当に気にしないで?」
わたしの返事に不服なのか、
眉間に皺を寄せる、晴人くん。
律儀な子だなぁ…
そのとき、
お巡りさんが、戻ってきて
色々聞かれたあと、それぞれの家に
送ってもらうことになった。
帰り際に、わたしは晴人くんに、
ひとつ、お願いをした。
「晴人くん…ここで、わたしと
会ったことや、わたしがしたことは
誰にも内緒にして欲しいの。
いいかなぁ?」
桐生くんが知ったら、きっと
心配させちゃうだろうし…
なんで自分を頼らないんだって、
怒られるかもしれない。
わたしの気持ちが、通じたのか、
晴人くんは頷いてくれた。
「でも、家には連絡いってるから、
絶対とは言えないですけど…
さっき、そういえば兄ちゃんの
名前、知ってましたよね?
もしかして、知り合いですか?」
射抜くような瞳で、見つめる
晴人くんは、やっぱり桐生くんに
そっくりだ…
誤魔化しや嘘は、通用しない。
わたしの個人的な理由で、
晴人くんを巻き込むのは、
駄目だよね…
「あ、あのね…わたし、
お兄さんの、彼女なの。
こんなのが、彼女でごめんね」
伺うように、見つめると…
「えっ!?兄ちゃんの、彼女?
もしかして、今度の日曜に来る…
春瀬さん…ですか?」
心底驚いた表情で、目を大きく
開いている、晴人くん。
義足の彼女なんて、やっぱり
反対だろうな…
あんなにカッコイイ人の彼女が、
こんなで、ガッカリさせちゃったかな?
「俺、兄ちゃんが彼女連れて来るって
聞いてたんです。
だから、どんな人だろうって…」
あー…やっぱり、
がっかりしたよね。
でも、今更隠しても仕方ない。
これが、わたしで
義足である事は、変えられない…
あんなに、待ち遠しかった
お家デートも、
もう無理かもしれない。
下を向いて、うなだれたとき
「聞いてた通りの人でした」と、
優しく笑う表情は、桐生くん
そっくり。
「あの、聞いてた通りって?」
わたしが首を傾げると…
晴人くんは笑顔でこう言った。
「自分が辛い状況でも、いつも
周りに優しく出来る、
強い人だって」
桐生くん、そんな風に思って
くれてたんだ…
嬉しいけど、なんだかむず痒い!
そんな大層な人間じゃないのに…
「桐生くんは、わたしの全部を
受けとめてくれた…
初めて、好きになった人で。
わたしには、もったいないくらい」
晴人くんは首を振った。
「兄ちゃんが、春瀬さんを
好きになった気持ち、
よく分かります。
日曜日、楽しみにしてます!」
優しい笑顔で、手を振って
お巡りさんと去っていく後ろ姿を
わたしは、笑顔で見送った。
お巡りさんと連れ立って帰った、
わたしに、愛子さんは
びっくりしたまま固まって、
太一には、ものすごい勢いで
怒られた。
『なんで連絡しなかったんだ』って。
いつもと逆の立場になって、
約1時間にも及ぶ説教が、続いた。