君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
翌日、部活に出たわたしは、

桐生くんに、連れ出され、

昨日の太一と同様に、

『なんで連絡しなかったんだ!』と、

怒られてしまった。

晴人くんに、一応口止めしたけど

やっぱり、ばれっちゃったか…

隠し事とかできなさそうな

感じだったもんね。

桐生くんからの、お叱りの後、

璃子や聖奈ちゃんにも、怒られて

自分の行動が軽率だと、反省する

1日だった…

でも、あの時の行動に

後悔はひとつもない。

誰かにとっての大切な人を、

守ることが出来たんだから…

部活を終えて、更衣室を出ると、

桐生くんが、下駄箱に

立っていた。

それに気づいて、璃子は

手をヒラヒラさせて

帰っていった。

「今日から、ホームまで送る」

少し不機嫌な声色のままだけど、

わたしの手を握る、桐生くんの

手は、すごく優しい…

ドキドキする気持ちと、

全てを優しく包み込むような

安心感にわたしは、

幸せを感じた。

「昨日は、ごめんね?

今度からは、絶対連絡するから…

それより、晴人くん…

怪我とかしてなかった?

暗がりだったから、ちゃんと見て

あげれなくて」

覗き込みながら、尋ねると、

「春瀬のお陰で、傷ひとつなかった。

けど、春瀬にこんな傷、

つけちまって」

口元に、そっと手を当てる

桐生くんの瞳が、すごく辛そうに

揺れてる。

そんな顔、させたいわけじゃ

なかったのに…

桐生くんの手に、自分の手を

合わせた。

「ごめんな…怖かったろ?」

わたしは、首を振った。

「全然平気だよ?

だから、そんな顔しないで…」

背伸びして、両手で桐生くんの

頬を包んで、笑ってみせた。

もう、絶対に、桐生くんに

こんな顔させないって、

約束するから。

わたしの手を引き、そのまま

桐生くんの胸に抱き寄せられ、

すっぽりと収まるわたしを

更に、ギュッと抱きしめる

桐生くん。

「もう、絶対…春瀬を

傷付けさせない。

俺に守られてろ」

頭上から降ってくる、言葉は

とても切なくて、わたしの心を

ギュッと掴んで離さない…

こんなに、大切に想われて

いいのかなって思うくらいに。

「うん…」

桐生くんの腕の中で、わたしは

頷いた。

ホームまでの道を歩きながら、

桐生くんのご家族が、わたしの

どこまでを知っているのかが、

気になって…

「桐生くんのご家族は、ご両親と

晴人くんと4人だけなの?」

「もう1人…いや、1匹か。

うちは、5人家族だな」

1匹?

もしかして!!

「犬か猫、飼ってるの??」

動物大好きな、わたしにとっては

朗報だぁー!

答えを待つ、わたしを見て

クスッと笑った桐生くんは、

「晴人が拾ってきた、黒い犬。

名前は、見たまんまで【クロ】、

オスだな」

うわぁ!ワンちゃんかぁ!

早く会いたいなぁ…

「犬、好きなのか?」

「うん!大好き!

でも、犬だけじゃなくて、動物全般

大好き!」

わたしが笑うと、桐生くんも笑う。

そんな些細なことでも、

嬉しく思っちゃう!

大切な人には、いつも笑っていて

欲しい…

生きていれば、嬉しいや楽しいという

幸せな気持ちだけじゃなくて、

悲しいや辛いっていう、苦しい気持ちも

ある。

それでも、最後には

笑い合えるような関係でありたい。

「晴人くんとも、クロちゃんとも、

仲良くなりたいな」

わたしは、日曜日の事を考えて、

顔が緩みまくるのを感じた。

桐生くんの優しい眼差しに、

笑いかえした。








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