君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
未来の約束のしるし
今日から、新学期が始まる。

綺麗だった新緑の季節も

終わりに近づき、季節は秋へと

移り変わろうとしてる。

そして、わたし達も

衣替えの季節に突入した。

まだ少しだけ、暖かさが残っている

からか、薄い生地とは言えども、

長袖は、少し汗ばんでしまう。

夏と秋の間…

今日も朝から良い天気だ。

なによりも、翼くんとこうして

一緒に登校するのが一番、

嬉しいんだ!

昨日、何食べたとか、

バラエティ番組が面白かったとか…

そんな些細な会話も、

わたしにとっては、

当たり前のことじゃなくて、

全部が、特別な時間。

それに、今日は始業式が

終われば、お昼からは

翼くんとお出掛けすることに

なってて、昨日からずっと

そわそわしてたんだよね!

「今日は、どこに出掛けるの?」

「俺は、行きたいとこあんだけど、

流羽は、どっか行きたいとこねぇの?」

そう聞かれて、わたしが一番に

思ったのは…

「翼くんと一緒なら、どこでも!」

なんだそれ…と、

肩をすくめて見せる翼くんに、

わたしは心の中で呟く。

だって、翼くんと一緒なら

本当にどこでも楽しくて、

幸せなんだもん…と。

翼くんの行きたいところって

どこだろう?

そうやって考えるのも、

楽しいと思える。

「じゃあ、俺が行きたいとこ

行っていいか?」

「うん、もちろん!」

始業式の為、

体育館への移動中に

璃子と聖奈ちゃんに挟まれながら、

わたしは、いじられる。

その理由は、

桐生くんから、翼くんと

呼び方が変わったかららしい。

2人で居る時は、平気だけど

他の人達の前では、まだ少し

恥ずかしい、わたし。

それが分かっているのからこそ、

いじられるんだけど…

2人がいじりだすと、

クラスのみんなも、それに

乗っかる形で、冷やかしてくるから

わたしは終始、顔が熱い。

対して、翼くんは

どこ吹く風という感じで、

いじられたり、

冷やかされたりしても、

いつも通りのポーカーフェイスで

上手くかわしていて、

すごいなぁって思う。

1度、どうやったら

ポーカーフェイスになれるか、

翼くんに聞いた事がある。

でも…

『流羽は素直だから、

隠し事や嘘がつけないし、

感情が表情にすぐ出るから

無理だ』

と、言われちゃったんだよね。

けど、そういうのが

わたしらしくていいと

言ってくれたから、そのままの

わたしでいるんだけど。

かわせるくらいには、

なりたいかも…

からかわれる度に、

心臓がドキドキして

そのうち、倒れちゃうよ!

「いつの間に、そんな距離

縮まったのよー!

親友に隠し事はダメ!

あり得ない!!」

「だよねー!

わたしは、逐一報告してるのに!」

そんな事言いつつ、璃子も

夏休みから、日向くんと過ごす

時間が増えて、いい感じだって

知ってるよ?

聖奈ちゃんが教えてくれたもん。

でも、からかったりしたら

へそ曲げて、素直になれなくなる

実は、乙女な璃子だから、

璃子から聞くまでは、

そのままにしておこうって

決めてる。

でも、日向くんと付き合うって

なったら、少しだけ

いじってやるんだから!

そして、

聖奈ちゃんは、この夏休みに

実は透さんと2人でデートを

したって教えてくれた。

付き合うまでにはなってないけど、

かなりいい雰囲気らしくて、

夏休み中、本当に逐一報告して

くれた。

透さん、すごく優しくて

頼り甲斐がある人だから、

付き合ったら、きっと大切に

してくれると思う。

2人とも、上手くいけばいいな!

校長先生の長い長い挨拶が

終わって、教室に着く頃には

わたしは翼くんとの

お出掛けのことで、

頭がいっぱいで…

HRが終わって、みんな

足早に教室から去っていく。

「流羽は今から

桐生とデートなんでしょ?」

璃子の声で現実に引き戻された

わたしは、慌てて答えた。

「うん、そうだよ。

行きたいところがあるんだって」

「桐生が行きたいところって

何だろうね?

聞いてもスルーしそう!」

聖奈ちゃん、よくお分かりで…

別に、意図して

黙ってるわけじゃないんだけど、

聞くなオーラが漂ってるのは

事実だ。

「そうだね、当たってるかも…

でも、サプライズみたいで

楽しいよ!すごく」

わたしの言葉に、

ニヤニヤする2人…

「もうっ!

そんな顔で見ないでー!」

顔を覆うわたしの頭に

大きくて温かい…

大好きな人の手が乗せられた。

顔を上げてみると…

ほら、やっぱり!

翼くんだ!

「流羽、そろそろ行けるか?」

優しく細められた瞳に

キュンとしながら、頷いた。

「うん!大丈夫だよ!」

わたし達のやり取りを見て

ニヤつく2人は、声を揃えて

「「行ってらっしゃーい!」」と

手を振った。

翼くんと2人、

肩をすくめる振りをして

手を振った。















< 78 / 102 >

この作品をシェア

pagetop