君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
学校を出て、手を繋ぎながら

駅の方へと歩いていく。

どこに向かってるんだろう?

そして、たどり着いたのは

可愛い雑貨屋さんで、

わたしが璃子や聖奈ちゃんと

よく行くお店だ!

でも、ここが翼くんの

行きたいところ?

「翼くんの行きたいところって

ここ?」

「そう、ここ。入ろ」

わたしの手を引いて、

真っ直ぐに向かったのは…

店内の1番奥、アクセサリー売り場。

でも、ここって

女の子向けの物ばかりで、

翼くんが身に着けられるものは

ないと思うんだけど…

内心、首を傾げていると、

「注文した桐生です。

届いてますか?」

翼くんの言葉に、にっこりと

笑って、奥に消えていく店員さん。

「注文って、何を注文したの?」

「見たら分かる」

そう言って、意味深に笑った

翼くんに、わたしは首を傾げる。

その時、店員さんが

小さな淡いピンク色の箱を持って

戻って来て、中身を確認して下さいと

話しかけている。

なんだろう、あれ…

そして、あっという間に

お会計を済ませた翼くんは、

もうひとつ行きたいところがあると

駅に向かって歩き出した。

「今度はどこ行くの?」

「着いてからの楽しみが

なくなっていいなら、教える」

またまた意味深に笑う翼くんは

どこか楽しそう。

じゃあ、聞かないでおこう!

「なら、聞かないでおく!」

楽しみは後に取っとかないとね!

わたしは、笑いながら頷いた。

電車に揺られて、15分…

着いたのは【緑丘公園前駅】。

昔、小学校の遠足で1度だけ来た

懐かしい場所だった。

ここから、少し先の

小高い丘にあったよね、たしか。

翼くんに手を引かれ、

たどり着いた場所は、やっぱり

緑丘公園だった。

木と花が沢山あって、

季節ごとに、色々な花が咲いて

すごく綺麗なところで、

実はお気に入りの場所なんだよね。

今は、コスモスが咲いてる時期かな?

お昼の時間という事もあってか、

子供が沢山いて、

みんな、すごく楽しそう。

「あそこのベンチ座るか」

翼くんの指差す先に、

コスモスに囲まれたベンチが

見えた。

「うん!」

ベンチに座って、

走り回る子供達を眺めていると

愛子さんに連れられて、

ホームのみんなと来た時の

楽しそうに笑う、顔や声を

思い出す。

「流羽、目瞑って」

「え?どうして?」

不思議に思って、首を傾げると

「いいから、早く」

真剣な表情の翼くんに

少し驚いたけど、素直に

目を瞑った。

「俺がいいって言うまで、

開けるなよ」

ふふ!なんだろう?

「うん、分かった」

そう呟いた、次の瞬間…

右手の薬指にひんやり冷たい感触。

えっ?なに?

「いいぞ」

そっと目を開けて、

右手の薬指に視線を落とすと、

そこには、綺麗な淡いピンク色の

石が付いた指輪。

「えっ?これ…」

指輪と翼くんを交互に見て

尋ねるわたしに、翼くんは

夏休みの最後に交わした約束の

話を聞かせてくれた。

「いつかの時が来るまで、

予約って言ったろ?」

そう言って、自分の右手を上げて

見せた。

そこには、シンプルな

シルバーの指輪。

もしかして、これって…

「未来の約束の指輪?」

「そう、これで正真正銘

流羽の婚約者ってとこ」

うそ…!?

これって、現実だよね?

夢じゃないよね?

本当に本当?

「翼くん、ありがとう…

すごく嬉しい!

こんな素敵なプレゼント、

生まれて初めてだよ…」

優しく笑う翼くんの顔が

滲んで、よく見えない。

溢れて止まらない涙を

必死に拭って、わたしは

思いきり笑った。

わたしと翼くんの

未来の約束のしるし…

右手の薬指に光る指輪を

そっと撫でる。

ずっと一緒のしるしだ。

「どうして、サイズ分かったの?

そんな話、した事ないよね?」

「香月から聞いた。

サイズも、この場所が

流羽のお気に入りの場所ってことも」

いつの間に、そんなこと…

全然知らなかった。

わたしのために、色々考えて

くれてたなんて…

「ありがとう…

わたしばっかり、色んなもの

貰ってる。

わたしも、なにかしたい!」

「じゃあ…

流羽からキスして。

未来の約束のための」

「えっ!?

いやー…あの…

それ以外っていうのは…」

「無理」

出たっ!!

急に駄々っ子になる翼くん!

でも、わたしのために

色々考えてくれて、

素敵なプレゼントまで

貰ったし…

それで、翼くんが笑ってくれるなら。

「…分かった。

じゃあ、目瞑ってくれる?」

スッと目を閉じた翼くんに

そっと近づいて…

触れるだけのキスをした。

あぁ!!

恥ずかしい過ぎるよ!!

顔を覆うわたしの手は

絡め取られた。

息つく間もなく、引き寄せられ

わたしは唇を奪われた。

未来の約束のキスは、

とびきり甘くて、温かい

優しいキスだった。















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