君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
新学期が始まり、気が付けば

紅葉の季節を迎えた11月半ば…

日向くんから、

「もうすぐ、翼の誕生日だけど

流羽ちゃんは何かしてやるの?」

そう言われて、頭を鈍器のような

もので殴られたかのような

気分だった。

そういえば、付き合い出して

日が経つのに、想いが通じ合った

ことで、幸せだと浮かれて

すっかり忘れてしまっていたけど、

もうすぐ翼くんのお誕生日が

迫っている。

ああー…どうしよう…

翼くんが生まれたのは、

12月12日で

お誕生日まで、残り2週間。

愛子さんから毎月、お小遣いを

貰っているわたしは、いつか

ホームを出るときの為にと、

1度も手をつけずにいる。

だから、翼くんのお誕生日の

プレゼントを買うお金は

あるけれど…

でも、どうせなら自分で

働いたお金でプレゼントを

用意したい。

「璃子…わたし、

バイトしたいんだけど、

わたしみたいなのでも

雇ってくれる所あるかな?」

「え?バイト?

どしたの、急に…」

不思議そうに尋ねてくる璃子に

翼くんのお誕生日プレゼントを

自分で働いて買いたいと話すと…

「短期で働けるバイトなら、

大輝知ってるかも…

聞いてみよっか?」

大輝…

ニコっと微笑みながら、

日向くんを呼び捨てにする璃子。

聞けば、わたしが記憶を失くす

少し前から付き合い始めたらしい。

日向くんの真っ直ぐに伝えてくる

言葉に、隠れ乙女の璃子は

お付き合いをOKしたらしい。

口を開けば、うるさいだの

なんだのと文句言ってたのに

いつから日向くんに好意を

寄せていたんだろう?

謎だ…

でも、大切な人が幸せそうに

している姿を見るのは、

素直に嬉しい。

…って今はそれどころではない!

「日向くん?

どうして日向くんが、

そんな事知ってるの?」

頬を染めながら、咳払いをした

璃子。

「クリスマスにプレゼントを

したいからって、こないだ

話してたから…」

こんな女の子みたいになる

璃子、初めて見た。

…可愛い!

「へー…そうなんだー!」

わたしがニヤニヤしながら、

返事すると、顔を真っ赤に

しながら、口籠る璃子は

贔屓目なしに、本当に可愛い。

今までは、わたしを守るために

色恋沙汰とは無縁だった…

というか、わたしのために、

出来なかったんだよね、きっと。

ごめんね、璃子…

わたしは自分を守ることに

必死で、璃子の気持ちを

見ようとしてなかった。

駄目な親友だよね。

でも、これからは

日向くんと一緒に幸せな道を

歩いて行ってね?

日向くんにバイトの件を

メールしてくれている

女の子な璃子を、わたしは

嬉しい気持ちで見つめた。

今度、たくさん話をしようね!
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