君の背中に見えた輝く翼に、私は恋に落ちました
翼くんに断りを入れて、

ホームに電話をした。

電話に出た愛子さんに、正直に

翼くんのお誕生日だから、

今日は一緒に居たいと伝えると

「桐生くんなら安心だわ。

盛大にお祝いしてあげなさい!」

そう言って外泊を許可してくれた。

電話を終えて、翼くんの待つ

部屋へと進み、ドアを開けると

ベットに背を預けて座る

部屋着の翼くんがいた。

制服のままのわたしに、

「俺の服貸すから、着替えたら?

制服シワになっちまうし、

くつろげないだろ?」

そう言って、手渡された

翼くんの香りがする服を

翼くんがリビングに飲み物を

取りに行く間に着替えた。

なんだか、ダボダボだ…

足元は殿様みたいになってるし、

手も服で隠れて見えない。

胸元はスースーするほど

開いてるし…

子供っぽいよね、わたし…

何もかもが小さくて、

そんな自分に溜め息が出る。

ガチャ…

「飲みもん、これしか…」

そう言って、固まってしまった

翼くんの顔がみるみるうちに

赤くなってって…

「…ヤバイ、それ」と言って

目を逸らされた。

自分でも思ってたけど、

改めて言われると、へこむな…

「変…だよね?

もう少しスタイル良ければ

着こなせたんだろうけど…

笑えるほど似合ってない。

子供みたいだよね…」

こんなこと今更気にしたって

仕方ないのは分かってるけど…

自嘲気味に笑うと、翼くんは

飲み物をテーブルの上に置いて

「そういう意味じゃなくて…

可愛すぎてヤバイってこと」

そう言ってわたしの手を取り

後ろから抱き締める形で

膝の間にわたしを座らせた。

「翼くんって、変だよね?

こんなのが可愛いなんて…

そもそも可愛くないし」

「いや、俺にとっては

流羽が1番可愛い」

そんな事言うのは翼くんだけだよ。

中学生…下手したら小学生に

間違われるくらいなのに。

膝に顔を埋めて溜め息をつく

わたしの首筋に柔らかくて

温かいものが触れた。

「ひゃっ!」

慌てて首を押さえて

振り返ると…

熱っぽい視線で見つめる

翼くんと目が合った。

そのまま、後頭部に手を

添えた翼くんはわたしを

引き寄せキスをした。

離れては近づいてを繰り返し

息も絶え絶えになった頃、

わたしの頭はフワフワしていて

身体に力が入らない。

翼くんの胸に寄りかかるように

もたれるわたしを、

ヒョイと持ち上げ、ベットに

寝かせてくれる翼くん。

そして、初めてひとつに

なった時のように、

大きくて温かい手が、

わたしを生まれたままの姿に

していく。

ソケットが外されて膝から

下がない足も、背中の火傷の痕も、

凹凸のない幼児体型の身体も

翼くんは優しく触れてくれる。

身体のあちこちにキスをして

わたしの身体に、小さな

赤い花が咲いていく。

その数だけ、翼くんに好きだと

言われているみたいで

すごく嬉しい。

「流羽、愛してる」

そう愛おしそうに呟く翼くんに

わたしも…

「わたしも翼くんを愛してる。

こんな傷だらけのわたしだけど、

ずっと一緒に居てね?」

「当たり前だろ。

そのままの流羽が好きだ。

だから、こんな傷なんて

忘れちまうくらいに

愛してやる、ずっと」

その言葉と少しの痛みを

わたしは一生忘れない…

これから先に何があっても

離さないから、覚悟してね?
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