記憶を失くした少女【完】
15分ぐらいすると、肴浜商店街にあるカラオケ店に到着した。
平日だからかあまり人はおらず、商店街に来てるのはおそらく社会人とかだろう。
「ほら」
バイクから降りるとき、先に降りていた遥輝が私に手を伸ばしてくれてたから、それに掴まって降りる。
…………………意外と紳士なところあるんだ。
すでにみんなは先に到着しており、カラオケ店の中で受付をしているとこに私達が合流をした。
「ねぇ~、取りあえずフリータイムでいい~?」
「いんじゃね?飽きたら途中で退出すれば問題ねぇよ」
「平日だから安いしな」
「じゃあ、フリータイムでぇ!」
萌ちゃんが皆をまとめテキパキと手続きを進めている様子。
「では、奥の105号室になります。ごゆっくりどうぞ~!」
店員さんから開始・退出時間やバーコードなどが記載された赤のプレートを手渡されると、行きにジュースをついで105号室へ向かった。
「カラオケ久しぶりだな~!」
「最初誰歌う?」
「大平から行けばー?」
中は意外と広くておそらく10人ぐらいは入るであろう、普通のカラオケボックスよりも少し大きめの部屋で、プロジェクターと普通にテレビで表示される2パターンが揃っていた。
雰囲気でつけたミラーボールがキラキラと部屋の中を照らし回す。
「お前のことが~♪誰よりも~♪」
大平くんの歌に合わせて周りで相づちを打ったり、手拍子をしたり。
少し前までは関わりたくないと思っていた人たちなのに、何だか不思議な気分………。
1曲が終わると次に入れていた曲が数分もしないうちに始まる。
「萌って西田カノ好きだよな~」
「だって、全部の歌がいいじゃん!」
萌ちゃんが入れたのは、女子に大人気の歌手、西田カノちゃんの曲だった。
見た目は少しギャルっぽいがそこがまた可愛い女の子で、曲のたびに雰囲気や服装などが変わる。女の子の恋愛に対する代弁者とも言われている人気歌手の1人だ。