記憶を失くした少女【完】
あの人
_______カラン♪
この時間の繁華街は昼間とは雰囲気がかなり変わる。
サラリーマンや、水商売系の人、ガラの悪い集団など、高校生が来るには少し危険だっていつも感じる。
でも、そんな中に店を構えている凌馬さんのお店は全然いかがわしくなく、むしろ何だか心が落ち着く。
まるで自分の実家(……まぁ、実際はどんなのか分かんないけど)かのような、気持ちにさせられる。
「いらっしゃい。久しぶりだな」
私も凌馬さんの顔を見かけると、いつものカウンター席へと着いた。
あれからお店にあまり顔を出していないというのに、全然凌馬さんはいつも通り。
いつもと少し違うとしたら、珍しくワックスで髪を遊ばせているくらいか。
「あ、これ?綺羅から店にくるって連絡入ったから、少し整えたんだ(笑)」
「え、私が来るから?」
「最近来ねえから、俺の魅力が薄れてきたのかってな(笑)」
冗談っぽく笑う凌馬さんにつられて、私も思わず笑ってしまう。