記憶を失くした少女【完】
【side綺羅】
あと少しでコンビニへつく。
だけどその前に、あの日落ちた歩道橋を越えないといけない………………………。
走る足が少し震える。
登るのが少し怖い。また落ちるんじゃないかって思ってしまう。
「頑張れ………綺羅!」
自分を奮い立て、何とか登り切る。
あとは降りるだけ…………………………。
_____ドンッ。
「あ、すいません!!!」
人にぶつかり誰かの謝る声が聞こえる。でもそれ以前に再び起こってしまったデジャブ感に体が凍りつく。
体が下へゆっくりと落ちていく。
あぁ………………また私は記憶を失うのかもしれない。
目が冷めたら遥輝のことも、みんなのことも………………凌馬さんのことも思い出せなくて、何も知らない孤独に戻るのかもしれない。
落ちることより、また記憶を失うかもしれないということの方が、私はよっぽど恐ろしい。