記憶を失くした少女【完】
「マジかよ…………そんな話あるんだな」
「まぁ、そんな訳だから綺羅に取ったらお前は初対面なんだよ」
「じゃあ、俺も自己紹介しないとな!旭川迅(あさひがわ じん)、よろしく!」
話を聞くと2人は同級生だったらしい。
「俺と凌馬は昔ヤンチャでなぁ~よく警察のお世話になったもんだ(笑)」
お酒のせいか思い出話に花が咲く。
「地元の不良達も恐れるぐらいだったんだぞ~!」
「へぇ~、凌馬さんが不良………」
全然想像つかない。
「コイツ、今は落ち着いてるが20歳過ぎるまではすごかったんだから!」
「どんな感じだったんですか?」
「目つき悪いし迫力もハンパなくて~…「いい加減にしろ」
途中で凌馬さんから遮られる。
「えー!武勇伝を聞かせてやってるんだよ!」
「酔っぱらいの武勇伝はキツい」
少し冷めた感じに言う凌馬さんは少し新鮮だ。
「そうだ綺羅。お前のとこに持っていこうと思ってたんだけど、クリーニング済んだから返しとくよ」
急に思い出したかのようにそういうと、凌馬さんは裏へ行き、再び手さげ袋を持って戻ってきた。
「はい」
「これは…………?」
「お前の学校の制服だ」
確かに中に制服のリボンらしきものが見える。
確か地元の蒼坂(あおざか)高校だっけ?
「大丈夫なの~?今の綺羅ちゃんあの学校に戻して?」
ん?何か問題なことでもあったのかな?
「あの学校はね、地元で有名な不良校なんだよ」
………………………不良………校………………………不良校!!!???
「その顔……凌馬もしかして綺羅ちゃんに教えてなかったな?」
「………あそこは不良校だったな。確かに危険だし、別に嫌だったら転校させるだけだけど、綺羅はどうしたい?」
ここで急に私!!??
「不良校は好きじゃない。でも、かと言って今更転校するのもどうかなって思う」
つまり、
「今はこの学校で頑張ってみる。それでも無理だったら転校を考えるよ」
記憶の問題もあるし、もしかしたら情報が転がってるかもしれない。
「本当にいいんだな?」
「うん」
これ以上迷惑はかけたくないし。