記憶を失くした少女【完】
「席は1番後ろの左側の窓際の席だ。まぁ…………くじ引きであそこになったわけだが、嫌だったら教えてくれ」
先生がそう言った席に向かうと、前と横、そして右斜めの席は、空席状態でガランとしていた。
恐らく遅刻か欠席なんだろう。この3人は。
周りの突き刺さるような視線を感じつつ、ホームルームは終わった。
1限目の授業、数学の準備をしていたとき、早速ギャル4人組に机の周りを囲まれた。
『友達になりたい』とか『お喋りしよう』とか、そういった感じではないことが、何となく雰囲気で分かる。
「ねぇ、急にどうしたのその髪(笑)いつもの得意な巻き髪どうしたんだよ(笑)」
腰まである金髪を巻いた、ケバい顔の女があざ笑うかのように言う。
「清純ぶってるつもり?あんたそれでまた男をたぶらかすんだ?(笑)ウケるんだけど」
「記憶喪失ってさ、結局は嘘なんだろ?あんたのお得意のデタラメなんだろ?(笑)」
「相手にされなかったからって、嘘までついで近づく気なんだろ?お前なんて相手にされねぇから。安堂さんがいんだからね?」
私が喋らないことをいいことに、勝手なことを喋る彼女ら。