記憶を失くした少女【完】
「っていうかさ!今日教室言ったら、ビックリすることあってさ!!」
何かを思い出したのか、大平がいきなり叫んだ。
「大平、うるさい。鼓膜敗れる」
瑠衣は大平と近いから少し鬱陶しそうだ。
「黒髪の子がさ、"山田綺羅"だったんだよ~!!!」
______ピクッ。
大平のその言葉に体が反応する。
「記憶喪失って、山田のこと言ってたんだろ?」
大平が俺に向かってそう問いかける。
アイツ、クラスに戻ったのか。
「あん時から遥輝は山田と接触があったのかぁ~。見た目違うからほんと騙されるよなぁ!まだ遥輝のこと狙ってんのかな!?」
「記憶喪失だって、さっき自分でも言ってたでしょ?」
瑠衣によるツッコミ。
「あ、そうだったな!」
大平はそんなツッコミに手を叩いて笑った。
「萌今日、遅えな?何してんだ?」
笑い疲れたのか、飽きたのか、急に話が変わった。
「アイツなら、先生に今日中までの書類提出してから屋上くるって言ってたぞ」
「そんなん、別に明日出しても平気だろうが……。ったく、そうゆうときだけ萌は真面目だな(笑)」
そう言えば。萌をこの族の姫にしたいって言い出したの、大平だったけな……。
いきなりこの屋上に転校してきたばかりの萌を連れてきて、『コイツ、他の女とは絶対違うから!!』って、必死だったけ。
そんときの萌は今のアイツみたいに、怯えてたっけな?
そう思うと、萌は良い意味で変わった。
明るく、よく笑うようになった。
やっぱり居場所や信頼できる仲間が出来ると変わるものなんだなって。