イケメン医師は今日も新妻が可愛くて仕方ない
「はい、どうぞ」
そう私が応えると、入ってきたのはこの病院で有名な細マッチョの若い救命救急医。
確か伊吹と同期と聞いている。
「大石若先生。そろそろ帰らないと、嫁さんに捨てられるぞ?」
ニヤッと笑うその顔は、ワイルドそのもの。
医者より何かしらのスポーツをやらせた方が似合いそうな体つきなんだけど。
そんなワイルド系のイケメンなお医者さんの登場に、伊吹が冷静に聞く。
「米澤、お前ここに来てていいのか?」
伊吹が聞くと、そのマッチョな米澤先生は苦笑しつつ答えた。
「俺は今日は上がりだ。二日連チャン泊まり込んでるんだぞ、そろそろ寝るにしても家に帰りたいよ」
ここら辺の三次救急にあたるここの救命救急医は、かなりの多忙だろう。
なり手がなかなか居ないと伯父様が言っていたし。
「このお嬢ちゃんを診てからでも俺は大丈夫だから、お前は早く嫁さん所に帰れよ。奈津子が千花ちゃんが様子が変だって言ってたぞ?今日は近くで飲んでるはずだ。迎えに行ってやれ」
あぁ、やっぱりいくら相手の仕事を理解していても新婚でこんなにほっとかれたら怒るか、悲しむかするよね。
私ってば、お世話になった山口さんになんてことしちゃったんだろう……。
流石にやらかした事実に凹んでると、私の顔を見た米澤先生が伊吹に言う。
「ほら、この嬢ちゃんも流石に事態を理解してるぞ?お前の大切な人は誰だ?」
そう言われて伊吹は、ハッと顔を上げて米澤先生を見るとひと言いうなり駆け出して行った。
「すまん、米澤!真穂頼む」
そう言って、帰っていく背中を私はやっと吹っ切れた気持ちで見送った。