イケメン医師は今日も新妻が可愛くて仕方ない
そうして伊吹が慌てて出て言ったあと、米澤先生が診てくれた。
「大分胸の音が綺麗になったな。この分なら検査結果次第だが、明日か明後日には退院出来るだろう」
そう言って、伊吹とは違う大きくてしっかりした手で撫でられる。
「お嬢ちゃんのやりきれない気持ちも分からなくはないが、大切な人を悲しませる事態に追い込むのは間違ってるよな。そこに自力で気付けたんだ。お嬢ちゃんはいい女になる」
そうニッと笑っていう米澤先生に、情けなく眉を落としつつ聞いてしまった。
「なれるかな?私ね、こんな意地悪な事しちゃったけど、山口さんのことは優しくて丁寧でしっかりお仕事してる大人だなって尊敬してるんだよ。私もあんな大人になりたい。出来れば、好きな人に好きって言われたかった……」
そう言って思わずポロっと零れた涙。
慌てて駆け出すその背中が、私の失恋にしっかり刺さった。
伊吹の大切な人は私じゃなくて、山口さん。
ううん、もう大石さんだったね。
「大石さんに会えたら、ごめんなさいって言う」
「ん、一歩いい女に近づいたな。さて、そんな嬢ちゃんに面会が来てるな。聞いてもらえよ」
そう言って出て行く米澤先生と入れ違いに来たのは、私の双子の従兄弟である圭人と結実だった。
堂々と遠慮せず入ってくるのは結実で、そのあとに少し気まずそうに入ってきた圭人。
「米澤先生、ありがとうございました」
診て、聞いてくれた米澤先生に私は頭を下げた。