イケメン医師は今日も新妻が可愛くて仕方ない
「それで、千花の返事はイエスしか受け付けないけど。どうだ?」
強気な態度と言葉とは裏腹に、私の手を握る伊吹は途端に表情も手も緊張感を持ったのが分かった。
私だって伊達にナースやってない。
そこそこ人の事は見れる。
だから、分かる。
強気で強引な言葉と態度をしているけど、伊吹は私の答えをそれはそれはかなり不安になりながら待っている事。
そしてそんな伊吹が私には何故か、いつの間にか可愛く映る。
いつもの強気で頼れる俺様腹黒さは形を潜めて、私の返事を待つ伊吹はまた格別に可愛くて、カッコよかった。
そっか……。
今まで好きな人はおろか、お付き合いもしたことが無かったけれどそれは私には伊吹が居たからだ。
無自覚で無意識な中でも、私はもう選んでたんだ……。
「結婚するんでしょ?私の答えなんて初めから決まってたの知ってて聞いたでしょ?しかも外堀もう埋めてるよね、伊吹なら」
そう苦笑しつつ返すと、伊吹は実にあっさりとその事実を認めた。
「うん、もう両家の親は結婚すること確定で見てる。いつお式?ってなってるな」
そう、サラっと返す腹黒策士な私の幼馴染み。
どうやら鈍感な私は、逃げ出す前に囲われてたらしい。
でもそれを憎めないのは少なからず私も、無意識で無自覚にこの幼馴染みを好いていたからに他ならない。
お付き合いは伊吹も言うように、自覚無しに結構続けてきた訳で……。
逃げる要素も断る要素も無かったから、私は笑顔を向けて答えた。
「伊吹、よろしくね!幸せになろうか?」
こうして私の返事から、自覚無しの交際0日で認識を改めさせられ、私はイケメン医師の奥さんになったのだった。