本日、結婚いたしましたが、偽装です。

『お前、いい奴だなぁ。このっ、純情ボーイめっ。もう、応援してやる!』


……ん?


『おう、俺もする!俺、お前のその素直な良い性格に胸打たれたわ!絶対、佐藤 深雪もお前に堕ちる!』


急に熱くなる男達。


『でもぉ、僕、こんな風だし……。かっこよくないし、背も低いし、痩せてないし……』


『大丈夫だ!人間表面だけが、全てじゃない!心だ、心が一番なんだ!』


……佐藤のことを可愛いから彼女にしたいってほざいていた奴が、よく言うなぁ……。


『そ、そう?じゃあ、僕、頑張ってみようかな』


……ん⁈


『おう!その心意気だ!頑張れ、走れ、光太郎!お前なら出来る!目指せっ、佐藤 深雪の彼氏というポジション!』


だから熱いってば、君。


頑張れ、走れって、競馬じゃないんだから。


という感じで、耳を大きくして盗み聞きをし、ツッコミを入れていたが、内心は全く余裕は無かった。


思わぬ伏兵がいたことに、びっくりしていた。


こんなに純朴そうな男性社員に佐藤がアタックされたら、どうしようかとヒヤヒヤしていた。


佐藤は気付いていないようだが、男性社員に人気があるということを知った俺は、何故か焦っていた。


その時くらいからだ。


俺が、もっと佐藤のことを知りたいと思ったのは。


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