黄色いレシート
そしてここは旦那と共に歩いた浜辺のすぐ近くだ。


当時の記憶が再び思い出されてくる。


むぎわら帽子をかぶった若い自分と、そんな自分の手を引く旦那。


砂浜へと続く階段を下りながら、明美の心臓はドクドクと早くなっていた。


ここが最後の思い出の場所であることと、レシートの文字が忘れられなくて。


階段を下りきった明美は靴を脱いで素足になった。


熱い砂が絡み付く。


ほとんど走るようにして波打ち際まで移動した。


冷たい海水が足を浸すと、ホッとため息を吐き出す。


あの時と全く同じだった。
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